鼻尖形成の効果は永久?後戻りする医学的理由と自家組織の定着率を解説

美容医療

鼻尖形成術を検討する際、多くの患者が最も懸念するのは、施術の効果が永久的に持続するのか、それとも時間の経過とともに元に戻ってしまうのかという点です。近年、ダウンタイムの短い低侵襲な施術が人気を博していますが、術後数ヶ月で形状が後戻りしてしまうケースは後を絶ちません。しかし、これは単なる施術の失敗ではなく、鼻の軟骨が持つスプリングバック現象(弾性復元力)や組織の生理学的反応として、医学的に説明がつく現象です。

鼻尖の形状を半永久的に維持するためには、糸による固定などの物理的な干渉だけでなく、組織の減量や自家軟骨移植による構造的な再構築が不可欠となります。

ここでは、なぜ簡易的な施術は後戻りしやすいのかという物理学的メカニズムから、自家組織を用いた外科手術における長期的な定着率、そして不可逆的な手術だからこそ知っておくべきリスクについて、形成外科学的な見地に基づき詳述します。一時の流行や広告文句に惑わされず、10年後も後悔しない選択をするための判断材料として、本稿の情報をお役立てください。

 

鼻尖形成は後戻りするのか?物理学的メカニズム

鼻尖形成術、特にメスを使わずに糸のみで行う施術を受けた後、時間の経過とともに鼻先の形状が元に戻ってしまう現象は決して珍しくありません。

多くの患者様はこれを施術の失敗や医師の技術不足と捉えがちですが、解剖学的な視点に立てば、生体組織が本来持っている恒常性や物理的な特性による正常な反応であると説明できるケースが大半です。特に永久的な効果を期待して施術を受けた場合、この現実との乖離は大きな失望へと繋がります。

ここでは、なぜ簡易的な鼻尖形成において効果の維持が困難なのか、そのメカニズムを物理学的な観点から詳解します。

鼻軟骨特有のスプリングバック現象

鼻先の形状を主に決定づけているのは、大鼻翼軟骨(だいびよくなんこつ)と呼ばれる組織です。この軟骨は、鼻の穴の縁を形作るように左右一対で存在しており、一般的に想像されるよりも遥かに強い弾力性と形状記憶性を有しています。

切らない鼻尖形成において行われる糸で左右の軟骨を縛り寄せるという操作は、物理的に見れば、反発力のあるバネを無理やり縮めている状態に等しいと言えます。軟骨には常に元の広がった形状に戻ろうとする力、すなわちスプリングバック(弾性復元力)が働き続けます。

手術直後は糸の張力が軟骨の反発力を上回っているため、シャープな鼻先が形成されます。しかし、時間の経過とともに糸自体がわずかに伸びたり、結び目が組織に食い込んだりすることで結束力が低下すると、軟骨の反発力が勝り、徐々に元の形状へと押し戻されていきます。

これは生体材料としての軟骨が健全である証拠でもありますが、同時に、構造的な切除や移植を行わない単独の糸留め術においては、永久的な形状維持が極めて困難であることの医学的な根拠となります。

糸が組織を切ってしまうチーズワイヤー効果

後戻りのもう一つの物理的要因として、外科領域で広く知られるチーズワイヤー効果(Cheese-wiring effect)が挙げられます。これは、硬いチーズを細いワイヤー(糸)で切断する様子に例えられた現象です。

鼻尖形成において、軟骨を寄せるために糸を強く結ぶと、その糸には常に強い張力がかかり続けます。一方で、軟骨組織は適度な柔らかさを持っています。この状態で持続的な圧力が加わると、糸自体は切れていなくても、糸が徐々に軟骨組織の内部へと食い込んでいく現象が発生します。

細い糸が組織を少しずつ切断するように移動してしまうと、当初固定していた位置から支点がずれ、結果として糸のループが緩んだのと同じ状態になります。これにより、鼻先の形状を維持するための拘束力が失われ、後戻りが生じます。

組織へのダメージを最小限に抑えるためには、適切な太さの糸を使用することや、点ではなく面で固定するような術式の工夫が求められますが、糸のみに依存する施術である以上、このリスクを完全にゼロにすることは物理的に難しいのが現状です。

脂肪溶解注射(BNLS等)の限界

鼻先の丸み、いわゆる団子鼻の改善を目的として、脂肪溶解注射(BNLSなど)が選択されることがあります。外科手術を避けたいというニーズには合致しますが、鼻尖の構造的な観点から見ると、その効果には明確な限界が存在します。

日本人の鼻尖部が丸く見える原因は、単に皮下脂肪が多いことだけではありません。以下のような複数の要素が複合的に絡み合っています。

原因となる要素 脂肪溶解注射の効果
皮下脂肪の厚み 効果あり(脂肪細胞の減少)
線維性結合組織(硬い組織) 効果なし(薬剤が反応しない)
大鼻翼軟骨の形状・開き 効果なし(構造は変化しない)
皮膚自体の厚み(真皮層) 効果なし(厚い皮膚はそのまま)

表に示す通り、脂肪溶解注射がアプローチできるのはあくまで柔らかい脂肪細胞のみです。多くのケースにおいて、団子鼻の主たる原因は大鼻翼軟骨が外側に張り出していることや、脂肪よりも硬い線維組織、あるいは皮膚そのものが分厚いことにあります。

したがって、土台となる軟骨の構造を変えずに脂肪だけを減らしても、劇的な変化や永久的な細さを実現することは困難です。一時的にすっきりしたように見えても、骨格的な要因が解決されていないため、満足のいく結果が得られない場合が多いと考えられます。

 

鼻尖形成が半永久的な効果を目指すための戻らない3つの条件

前章で解説した通り、鼻の軟骨組織が持つ復元力や組織への食い込みといった物理現象は、簡易的な処置だけで完全に制御できるものではありません。鼻尖形成において永久的あるいは半永久的な効果を期待する場合、これらの物理的な力に抗い、組織そのものの構造を作り変える外科的なアプローチが不可避となります。

医学的に見て、長期的に形態を維持できる鼻尖形成には、共通して3つの条件が満たされています。それは邪魔な組織の除去、軟骨の正しい位置への固定、そして強固な支柱の設置です。これらはメスを使用しない施術では実現が難しく、外科手術(切開法)が推奨される最大の根拠でもあります。ここでは、それぞれの工程がなぜ必要なのか、その医学的意義について詳述します。

物理的なボリュームダウン?皮下組織(線維脂肪)の除去

鼻先が丸く見える、あるいは大きく見える原因の多くは、皮膚と軟骨の間に存在する軟部組織の厚みにあります。この層には、皮下脂肪だけでなく、より硬く繊維質な線維脂肪組織(Fibrofatty tissue)が含まれており、これらは単純な脂肪溶解注射などでは除去が困難な組織です。

糸で軟骨を縛るだけの施術において後戻りが起きやすい理由の一つに、この軟部組織の介在が挙げられます。軟骨と軟骨の間に分厚い組織が挟まったまま糸で締め上げても、組織の弾力がクッションとなり、軟骨同士が密着しません。サンドイッチの具が多すぎるとパンが閉じないのと同様の原理です。

半永久的な効果を出すためには、まず切開によってこの余分な皮下組織を物理的に切除(タッキング)する必要があります。厚みの原因を取り除き、皮膚を薄くすることで、初めてシャープな形状が表出します。

また、組織を除去することで生じる癒着(ゆちゃく)現象は、術後の形状を維持する天然の接着剤のような役割を果たし、後戻りのリスクを大幅に低減させる効果も期待できます。

構造の再構築|大鼻翼軟骨の縫合

皮下組織を除去した後に行うのが、鼻の土台である大鼻翼軟骨(だいびよくなんこつ)の再配置です。日本人の多くは、この大鼻翼軟骨が左右に離れていたり、平坦に広がっていたりするため、鼻先が低く丸く見える傾向にあります。

この工程では、広がった左右の軟骨を中央に引き寄せ、医療用の非吸収糸などを用いて強固に縫合します。単に寄せるだけではなく、鼻先の頂点(トップ)が適切な位置に来るように立体的に持ち上げ、固定することが重要です。この手法はクリニックによって3D法などと呼ばれることもありますが、本質的には解剖学に基づいた軟骨の再建手術(Interdomal Suture等)を指します。

重要な点は、軟骨同士を直接触れ合わせることで、将来的に組織レベルでの結合を促すことです。前述した脂肪除去と組み合わせることで、糸の張力のみに頼るのではなく、組織自体が新しい形状で安定するため、糸が緩んだとしても形が崩れにくい構造が完成します。

支柱の作成|自家軟骨移植による補強

鼻尖形成の効果を生涯持続させるための最後の鍵となるのが、自家軟骨移植による構造補強です。欧米人に比べ、日本人の大鼻翼軟骨は小さく柔らかいため、単に縫合して高さを出すだけでは、皮膚の重みや張力に耐えきれず、時間の経過とともに鼻先が沈み込んでしまう(Pollybeak変形などの)リスクがあります。

そこで、自身の耳介軟骨(耳の軟骨)や鼻中隔軟骨を採取し、鼻先の柱となる部分や先端に移植します。これにより、テントの中に頑丈なポールを立てるように、鼻先を内側から支える支柱(ストラット)が形成されます。

スプリングバック(戻ろうとする力)に打ち勝つには、それ以上の強固な支持組織が必要です。自家組織であれば、異物反応のリスクも極めて低く、一度生着すれば体の一部として半永久的にその形態を維持します。物理的な高さと強度を担保するこの工程こそが、切らない施術との決定的な違いと言えます。

切らない施術と切る手術の比較

患者様が施術を選択する際、ダウンタイムやコストは大きな判断材料となります。しかし、長期的な視点に立った場合、それぞれの特徴は大きく異なります。以下に、医学的な観点および長期的なコストパフォーマンスの観点から両者を比較します。

項目 切らない施術(糸・注射) 切る手術(軟骨移植・縫合)
持続期間 数ヶ月~1年程度(一時的) 半永久的(加齢変化を除く)
後戻りリスク 高い(スプリングバックの影響を受けやすい) 低い(組織の癒着と支柱により安定)
ダウンタイム 短い(数日~1週間程度) 長い(ギプス固定等を含め1~2週間)
変化の度合い マイルド(劇的な変化は難しい) 大きい(構造から変化させるため確実性が高い)
費用対効果 短期的には安価だが、維持のために繰り返すと高額になる可能性がある。 初期費用は高額だが、一度で完了するため長期的にはコストパフォーマンスが良い。

この表からも分かるように、切らない施術は手軽さが魅力である一方、効果の永続性という点では外科手術に及びません。一生モノの結果を求めるのであれば、一時的なダウンタイムを受け入れてでも、構造から作り変える手術を選択することが、結果として最短のルートとなる場合が多いと言えます。

 

自家軟骨移植なら一生モノ?生着率と経年変化

外科手術によって鼻尖形成を行う際、最も頻繁に寄せられる質問の一つに、移植した軟骨は将来的に溶けてなくなってしまわないかというものがあります。ヒアルロン酸などの注入剤が時間とともに完全に分解・吸収されることから、軟骨移植も同様の経過をたどると懸念されるのは無理もありません。

医学的な結論から述べれば、自家軟骨(自身の耳や鼻中隔から採取した軟骨)を用いた移植術は、適切な処置が行われる限り、一生モノの土台となり得ます。これは、異物を挿入するのではなく、自身の生きた組織を移動させる手術だからです。

ただし、ミクロな視点で見れば、移植された組織が100%そのままの体積で残り続けるわけではありません。ここでは、移植組織がたどる生着のプロセスと、医学論文などで報告されている吸収率の実態について、正確な情報を提供します。

自家組織(耳介軟骨・鼻中隔軟骨)の生着とは

自家組織移植において最も重要なキーワードが生着(せいちゃく)です。これは単に組織がそこに留まっている状態を指すのではありません。移植された軟骨に対し、周囲の組織から新しい血管が伸びて入り込み(血管新生)、酸素や栄養が供給されるようになることで、移植された組織がその場所で再び生きた組織として定着する生物学的反応を指します。

シリコンプロテーゼやオステオポア(PCL素材)などの人工物は、体にとってはあくまで異物です。そのため、体はカプセル(被膜)を作って異物を隔離しようと反応しますが、血管が通うことはありません。

一方、自家軟骨は自身のDNAを持つ組織であるため、免疫による拒絶反応が起きず、周囲の組織と一体化します。一度生着が完了すれば、それは借り物のパーツではなく、鼻先の一部として恒久的に機能し続けます。この生物学的な統合プロセスこそが、人工物にはない自家組織最大の利点と言えます。

吸収率に関する医学的見解

ここで、医学的誠実さに基づき吸収率についても触れておく必要があります。自家軟骨は絶対に1mmも小さくならないと断言することは、科学的に正確ではありません。

形成外科領域の学術論文(Plastic and Reconstructive Surgery等)や臨床データによると、移植された軟骨は術後の血流再開までの期間において、わずかなボリューム減少(吸収)が起こり得るとされています。この吸収の程度は、移植する軟骨の形状や処理方法によって異なります。

  • ブロック軟骨(塊の状態):吸収率は比較的低く、多くの研究で臨床的に無視できる範囲(数%程度)と報告されており、構造維持に適しています。
  • 細かく砕いた軟骨(Diced Cartilage):表面積が増えるため、ブロック状のものに比べて吸収率がやや高くなる傾向がありますが、筋膜などで包むことで吸収を抑える工夫がなされます。

臨床の現場においては、この微細な吸収を見越して、あらかじめわずかにオーバーコレクション(大きめに移植)を行うことが一般的です。

したがって、医学的には微量な吸収が起きていたとしても、見た目の上(臨床的)で形が大きく崩れたり、高さが失われたりするような変化は稀であり、長期的に安定した形状を維持できるというのが、現代美容医療における一般的な見解です。

将来的なリスク(感染・露出)の低さ

長期的な経過、すなわち10年、20年というスパンで考えた場合、自家組織移植の優位性はさらに顕著になります。その理由は、加齢に伴う皮膚の変化への適応力にあります。

人間の皮膚は、加齢とともにコラーゲンが減少し、徐々に薄くなっていきます。この際、鼻先に硬い人工物(メッシュやL型プロテーゼなど)が入っていると、薄くなった皮膚を通して人工物の輪郭が浮き出て見えたり、最悪の場合は皮膚を突き破って露出したりするリスク(Late complication)が高まります。

素材の種類 生体への馴染み 長期的リスク(露出・感染)
自家軟骨 組織と一体化する 極めて低い(皮膚が薄くなっても自然)
人工物(オステオポア等) 被膜で隔離される 高い(経年で皮膚を圧迫・穿孔する恐れあり)

対して自家軟骨は、自身の体の一部であるため、皮膚が薄くなっても違和感なく馴染みます。鼻先の皮膚が白く変色したり、不自然に尖りすぎたりするといったトラブルが起きにくく、老後の顔貌においても自然な美しさを保ちやすいという特徴があります。

一生モノという言葉は、単に効果が持続するだけでなく、将来的なトラブルのリスクが低いという意味においても適していると言えるでしょう。

 

「永久」だからこそ知っておくべきリスクとは?

鼻尖形成において、自家組織移植を伴う外科手術は、半永久的な効果をもたらす最も確実な手段です。しかし、医療行為においてメリットのみが存在し、デメリットが存在しないという魔法のような施術はあり得ません。特に、組織構造を根本から作り変える手術においては、その変化が不可逆的(元に戻りにくい)であるがゆえに、特有のリスクや術後の経過管理が求められます。

これから手術を検討する方が、良い面だけでなく、起こり得る合併症や術後の負担についても正しく理解し、納得した上で決断を下せるよう、ここでは医学的なリスクと回避策について包み隠さず解説します。これらは決して頻発するものではありませんが、知識として持っておくことが、予期せぬトラブルを防ぐ最良の防御策となります。

ポリービーク変形(オウムのくちばし)

鼻尖形成術後、もっとも警戒すべき合併症の一つにポリービーク変形(Pollybeak deformity)が挙げられます。これは、術後に鼻先の頂点(トップ)よりも、その少し上の部分(スープラチップ)が丸く盛り上がってしまい、横から見た際にオウムのくちばしのように湾曲して見える現象です。

この変形が生じる原因は、主に二つの医学的要因に分類されます。

  • 瘢痕(はんこん)組織の過剰増殖:手術によって皮下脂肪を切除した際、皮膚と軟骨の間に生じた空洞(死腔)に血液やリンパ液が溜まると、治癒過程で線維組織が過剰に作られ、それが厚みとなって盛り上がることがあります。
  • 軟骨の支持力不足:移植した軟骨の強度が足りない場合や、固定位置が適切でない場合、術後の皮膚の収縮力に負けて鼻先が沈み込み、相対的にその上の部分が高く見えてしまうことがあります。

このリスクを最小限に抑えるためには、適切な軟骨移植による強固な支柱形成と、術直後の確実な圧迫固定が不可欠です。万が一症状が現れた場合には、ステロイド注射(ケナコルト等)による瘢痕の抑制や、再手術による修正が必要となるケースもあります。

ダウンタイム(ギプス固定)の必要性

切らない施術と外科手術の決定的な違いとして、ダウンタイムの有無が挙げられます。特に、軟骨移植や組織の再配置を行う鼻尖形成においては、術後3日から1週間程度のギプス固定が必須となります。

患者様の中には仕事が休めないため、固定なしで手術できないかと希望する方もいますが、医学的な観点から言えば、これは極めて危険な選択です。手術直後の組織は、いわば接着剤が乾いていない不安定な状態にあります。

この時期にギプスによる圧迫固定を行わないと、剥離したスペースに血液が溜まって血腫(けっしゅ)ができたり、せっかく縫合した軟骨がズレてしまったりするリスクが跳ね上がります。

また、前述したポリービーク変形を防ぐためにも、皮膚を軟骨に密着させる圧迫操作は非常に重要な工程です。ダウンタイムなしで永久的な効果を謳う広告も散見されますが、組織の生理学的な治癒プロセスを無視して美しい結果を得ることはできません。美しい鼻を手に入れるためには、一定期間のダウンタイムは支払うべきコストであると認識する必要があります。

修正手術の難易度

永久的な効果があるということは、裏を返せば気に入らなかった場合に、簡単に元の状態には戻せないということを意味します。これが、ヒアルロン酸注入や糸だけの施術とは異なる、外科手術の最も重い側面です。

切開を伴う手術を行うと、操作を加えた部位の組織は治癒過程で癒着し、硬い瘢痕組織を形成しながら一体化します。一度癒着した組織を再び剥離(はくり)して元の状態に戻す、あるいは形を作り直すという作業は、初回の手術に比べて格段に難易度が高くなります。正常な組織と瘢痕組織の境界を見極める高度な技術が必要となるほか、皮膚が硬くなっているため、希望通りの形が出しにくくなることもあります。

したがって、鼻尖形成の手術を検討する際には、とりあえずやってみて、ダメなら戻せばいいという安易な考えは禁物です。修正手術の連鎖(修正地獄)に陥らないためにも、最初のクリニック選びにおいて、医師の技術力や美的感覚が自分と合致しているかを慎重に見極めるプロセスが、何よりも重要となります。

 

後悔しないために!構造から治せるクリニックを見極めるポイント

鼻尖形成は、顔の中心における微細なバランスを調整する非常に繊細な手術です。特に、ここで解説してきたような自家組織移植を伴う構造的な手術は、一度行うと元の状態に完全に戻すことが困難な不可逆的な性質を持っています。それゆえ、クリニックや執刀医の選定は、手術そのものと同じか、それ以上に重要なプロセスとなります。

しかし、華やかな広告やSNS上の症例写真だけを見て、その医師の技術力や医療安全への姿勢を見極めることは容易ではありません。永久的な美しさを手に入れるためには、表面的な情報に惑わされず、医学的な根拠に基づいたカウンセリングが行われているかを確認する必要があります。一生モノの手術を任せるに足る信頼できる医師を見極めるために、カウンセリング時に必ず確認すべき3つの視点を解説します。

解剖学に基づいたできないことの提示

美容外科のカウンセリングにおいて、患者様の希望に対しすべて叶えられます、絶対に理想通りになりますと安請け合いする医師には注意が必要です。医学的、特に解剖学的な視点に立てば、鼻の形成には必ず個体差による限界が存在するからです。

例えば、鼻先の皮膚が非常に厚い(肉厚な)ケースでは、どれほど内部の軟骨を小さくし、支柱を立てて高さを出したとしても、皮膚の厚み自体が邪魔をして、極端に細くシャープな鼻先を形成することは物理的に不可能です。また、元々の軟骨が極端に小さい場合、無理に高さを出そうとすれば皮膚に過度な負担がかかり、将来的な血流障害や変形のリスクが高まります。

誠実で技術のある医師であれば、CT画像や触診に基づき、この皮膚の厚みでは、ここまで細くすることは難しい、この軟骨の強度では、これ以上の高さはリスクがあるといった医学的にできないことや推奨しないことを明確に伝えます。メリットだけでなく、解剖学的な制約(リミテーション)を論理的に説明し、現実的に可能な着地点を共有してくれる医師こそが、長期的な安全を考慮していると言えます。

術後1年以上の長期経過症例の確認

クリニックの実績を確認する際、ホームページやSNSに掲載されている症例写真を見ることは有効な手段ですが、その際はいつ撮影された写真かを確認することが極めて重要です。特に注意すべきは、手術直後(直後〜1ヶ月以内)の写真ばかりが掲載されているケースです。

鼻尖形成、特に自家軟骨移植を行った場合、術後数ヶ月間は組織の浮腫(むくみ)や瘢痕の増殖により、完成形とは異なる太さや形に見える時期があります。また逆に、術直後は麻酔液の影響や一時的な圧迫により、実際よりも細く見えているだけという場合もあります。医学的に組織が安定し、最終的な結果(完成)と呼べるのは、術後早くて6ヶ月、一般的には1年程度経過した時点です。

確認すべき時期 チェックポイント
術直後〜1ヶ月 傷の状態や腫れのピークを確認する参考にはなるが、最終的な形の判断材料にはならない。
術後6ヶ月〜1年 後戻りやポリービーク変形が起きていないか、移植軟骨が馴染んでいるかを確認できる最も重要な指標。

カウンセリングの際は、直後の劇的な変化だけでなく、術後1年以上経過しても形が崩れていない症例を見せてもらうよう依頼してください。長期経過の症例を豊富に提示できるクリニックは、それだけ術後の経過観察(フォローアップ)をしっかり行っており、結果に自信を持っている証拠と言えます。

リスク対策と保証制度の明確化

どれほど名医が執刀したとしても、生体を扱う外科手術である以上、感染や血種、予期せぬ左右差といった合併症のリスクを0%にすることはできません。重要なのは、トラブルが起きないことではなく、万が一トラブルが起きた際に、どのような対応が約束されているかです。

契約書にサインをする前に、以下の点について具体的な説明を求めることを推奨します。

  • 感染時の対応:抗生剤の投与だけでなく、洗浄処置や最悪の場合の抜去・再手術の費用はカバーされるか。
  • 左右差や変形の修正:医師の判断基準だけでなく、患者様が客観的な左右差を訴えた場合、どの程度の範囲まで無料で、あるいは安価で修正が可能か。
  • 保証期間:術後の組織が安定するまでの期間(通常1年程度)は保証対象となっているか。

失敗しませんから大丈夫ですとリスクの説明を避けるのではなく、感染率は数%程度ありますが、万が一の際は責任を持って対処しますと、ネガティブな事象に対する手順が確立されているクリニックを選ぶことが、後悔を防ぐための最後の砦となります。

 

まとめ

ここでは、鼻尖形成における永久性の定義と、それを実現するために不可欠な医学的条件について解説してきました。糸や注射のみに依存する切らない施術は、組織への侵襲が少ない反面、軟骨の復元力や組織の厚みに抗うことが難しく、その効果はどうしても一時的なものに留まります。

対して、余剰組織を切除し、自家軟骨で支柱を形成する外科的手術は、物理的な構造改革を伴うため、半永久的な形態維持が可能となります。しかし、その代償としてダウンタイムや修正の難しさといったリスクを引き受ける必要があり、メリットとデメリットは常に表裏一体の関係にあります。

重要なのは、絶対に崩れない魔法のような施術を探すことではなく、自身の鼻の解剖学的な特徴と限界を理解し、リスクを含めた医学的根拠を提示できる医師とともに、最適な術式を選択することです。鼻は顔貌の中心を担う重要なパーツであり、その形成には長期的な視点が欠かせません。

ここでの内容が、目先の変化だけでなく、生涯にわたって納得できる美しさを手に入れるための一助となれば幸いです。自身の鼻の構造に適した具体的な術式については、専門医による診察を通じて確認することを推奨します。

アラジン美容クリニックでは、美容医療および美容皮膚における長年の経験や博士号を持つ知見より、出逢う皆様のお一人ひとりに最適な施術を提供する「オンリーワン」を目指すカウンセリングを実施し、余計な情報や提案をせず、「ウソのない」美容医療で、必要な施術のみをご提案しております。

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