授乳中のシミ取りって本当にダメなの?治療リスクと安全な対策

美容医療

赤ちゃんとの新しい生活、その愛おしさと同時に、これまでなかったほどの目まぐるしい日々に、少しお疲れではないでしょうか。ふと鏡に映る自分を見たとき、妊娠前よりなんだか濃くなったように感じるシミに、ため息をついてしまう。「このシミ、今すぐどうにかしたいけれど、授乳中にシミ取りなんてしていいの?」「レーザー治療は赤ちゃんに影響がないの?」そんな切実な疑問と不安を抱えている方は少なくないでしょう。

先に結論からお伝えすると、多くのクリニックでは授乳中のレーザーによるシミ取りを推奨していません。しかし、それは決して「母親は美を諦めるべき」という意味ではないのです。そこには、大切な赤ちゃんの安全を何よりも優先するための、明確な医学的根拠があります。

ここでは、なぜ授乳中の治療が推奨されないのかという理由から、今すぐ始められる安全で最適なシミ対策、そして輝く未来の肌への準備まで、全ての疑問を解消し、不安を安心へと変えるための道筋を、一つひとつ丁寧に解説していきます。

 

Contents
  1. 授乳中のシミ取りレーザーは「原則として推奨しない」のが医学的な見解
  2. そもそもそのシミの正体は?産後に多くなるシミの種類
  3. なぜ?授乳中のシミ取りが推奨されない3つの医学的根拠
  4. 授乳中でも諦めないで!今日から始めるシミ対策の最適解
  5. 卒乳後の未来のために!今から知っておくべき本格的なシミ治療
  6. 授乳中のシミに関するよくあるご質問(Q&A)
  7. まとめ

授乳中のシミ取りレーザーは「原則として推奨しない」のが医学的な見解

鏡を見るたびに気になる、産後に濃くなったシミ。「一日でも早く、このシミを取りたい」と願う一方で、「でも、授乳中にレーザー治療なんて本当に大丈夫?」という不安が、心の中で交錯しているのではないでしょうか。

現在、多くの美容クリニックでは、授乳期間中のレーザーや光(IPL)によるシミ取り治療を「原則として推奨しない」という方針を取っており、それはおそらくどこでも同様です。この後の内容で詳しく解説する明確な医学的根拠に基づき、大切な赤ちゃんの安全を最優先に考えた上での統一見解だとご理解ください。

そのようにお伝えすると、「やっぱりダメなんだ…」と、がっかりさせてしまうかもしれません。しかし、どうか誤解しないでください。これは決して「お母さんはキレイになることを我慢しなさい」という意味では全くないのです。むしろ、育児に奮闘する「美しくありたい」と願う気持ちを、心から応援したいと考えています。

ではなぜ、推奨しないのか。それは、赤ちゃんにとって、限りなく100%に近い安全性を確保するためです。授乳期は、女性の身体がホルモンバランスの大きな変化の中にあり、肌も非常にデリケートで予測しにくい状態にあります。そのような特殊な時期にレーザーという外部からの強い刺激を与えることには、通常時とは異なる特有のリスクが伴う可能性があるのです。

ここで一つ知っておいていただきたいのは、過去に授乳中のシミ取りレーザーが原因で、母子に重大な健康被害が多発したという報告があるわけではない、ということです。あくまで「万が一」の可能性も排除し、あらゆるリスクを回避するための、いわば「予防的な安全措置」なのです。

 

そもそもそのシミの正体は?産後に多くなるシミの種類

前章で、授乳中のシミ取りレーザー治療は「原則として推奨しない」とお伝えしました。その大きな理由の一つが、そのシミの「正体」に隠されています。ひと言で「シミ」といっても、実は様々な種類があり、原因も性質もそれぞれ異なります。原因が違えば、当然、効果的なアプローチも変わってきます。

特に、産後から授乳期にかけての女性の肌には、特有の原因で現れやすいシミが存在するのです。ここでは、多くのママたちが悩まれる代表的な2つのシミ、「肝斑(かんぱん)」と「老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)」について詳しく見ていきましょう。ご自身のシミがどちらのタイプに近いか、鏡を見ながら読み進めてみてください。敵の正体を知ることが、的確なケアへの最短ルートです。

ホルモンの影響を強く受ける「肝斑(かんぱん)」

なんだか頬骨のあたりに、左右対称にもやもやとした薄茶色の影が広がっている…。一つひとつの輪郭ははっきりせず、まるで淡い絵の具をにじませたかのように見える。もし、シミがこのような特徴に当てはまるなら、それは「肝斑」かもしれません。

肝斑の最大の特徴は、その発生に女性ホルモンのバランスが深く関わっていることです。妊娠・出産を経て、そして今まさに授乳を続けている体内では、プロゲステロンやエストロゲンといった女性ホルモンが大きく変動しています。このホルモンの揺らぎが、シミの原因となるメラニンを作り出す細胞「メラノサイト」を過剰に刺激し、活性化させてしまうのです。これが、妊娠中にシミが濃くなったり、今までなかった場所に肝斑が現れたりする主なメカニズムです。

そして、ここが非常に重要なポイントなのですが、肝斑は非常にデリケートで、不適切な強い刺激に反応しやすいという性質を持っています。一般的なシミに有効なレーザー治療でも、機種の選択や出力設定を誤ると、かえってメラノサイトを刺激してしまい、治療前よりシミが濃くなる「増悪(ぞうあく)」というリスクを伴います。授乳中でホルモンバランスが不安定な時期は、このリスクが通常時よりも高まるため、特に慎重な判断が求められるのです。

紫外線の蓄積による「老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)」

もう一つは、いわゆる「シミ」として最も一般的に知られている「老人性色素斑」です。先ほどの肝斑とは対照的に、一つひとつの輪郭が比較的はっきりしている円形の茶色いシミで、大きさは様々です。「老人性」という名前から少し驚かれるかもしれませんが、早い方では20代から現れることもあり、その主な原因は、これまで浴びてきた「紫外線の蓄積」です。

肌は紫外線を浴びると、自らを守るためにメラニンを生成します。若い頃は肌のターンオーバー(新陳代謝)によって、生成されたメラニンもスムーズに排出されます。しかし、長年にわたって紫外線のダメージが蓄積されると、メラニンの生成が過剰になったり、ターンオーバーが乱れて排出が滞ったりすることで、肌にメラニンが居座り、シミとして定着してしまうのです。

赤ちゃんのお世話に追われる毎日、ついご自身の日焼け止めを塗り忘れてしまったり、塗り直す時間がなかったりすることはありませんか?育児中は、お子様と公園に出かけたり、洗濯物を干したりと、無防備に紫外線を浴びてしまう機会が増えがちです。

その結果、これまで潜んでいたシミが表面化したり、元々あったシミの色が濃くなったりすることが少なくありません。この老人性色素斑は、本来レーザー治療の良い適応となりますが、授乳期は他のリスクも考慮する必要があるため、やはり治療開始のタイミングは慎重に検討すべきと言えるでしょう。

 

なぜ?授乳中のシミ取りが推奨されない3つの医学的根拠

前章で、産後の肌にはホルモンの影響を強く受ける「肝斑」などが現れやすいことをお伝えしました。このように、ただでさえ肌が特殊な状態にある授乳期に、なぜレーザーのような積極的なシミ取り治療が推奨されないのでしょうか。

その背景には、大きく分けて3つの明確な医学的根拠が存在します。それは、①自身の肌で起こりうる予期せぬリスク、②産後の身体特有のダウンタイムの問題、そして何よりも大切な、③赤ちゃんへの影響という3つの視点です。これらを一つひとつ知ることで、なぜ私たちが慎重な姿勢をとるのか、きっと深くご理解いただけるはずです。

根拠1|ホルモンバランスの影響で「シミが濃くなるリスク」が非常に高い

まず最大の理由として、授乳期の特殊なホルモンバランスが、レーザー治療の結果に直接的な悪影響を及ぼす可能性が高いという点が挙げられます。皮膚科学の知見では、妊娠から授乳期にかけての女性の身体は、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)といった女性ホルモンの影響を強く受け続けています。これらのホルモンには、シミの原因であるメラニンを作り出す工場「メラノサイト」を活性化させる働きがあるのです。

いわば、授乳期の肌のメラノサイトは、常にアクセルが踏まれやすい、非常に敏感で過敏な状態にあると言えます。このタイミングでシミ取りレーザーという強い熱エネルギーの刺激を与えると、どうなるでしょうか。本来であればシミの原因のみを狙い撃ちするはずのレーザーが、過敏になっているメラノサイト全体を過剰に刺激し、防御反応としてメラニンを大量に生成させてしまうことがあるのです。

これが、治療後に発生する「炎症後色素沈着(PIH)」と呼ばれる現象です。シミを薄くするために治療を受けたはずが、かえって以前より広範囲に、色濃いシミとなってしまう…。この悲しい結果を招くリスクが、通常時と比較して格段に高まってしまうのです。

根拠2|産後のデリケートな肌状態で予期せぬ肌トラブルを招きやすい

次に、ご自身の肌コンディションの問題です。夜中の授乳や夜泣きで、まとまった睡眠が取れない。赤ちゃんのお世話が最優先で、自分の食事やスキンケアは後回しになりがち。産後の生活は、心身ともに大きな負担がかかります。こうした睡眠不足やストレス、栄養バランスの乱れは、肌の健康状態を著しく低下させ、外部の刺激から肌を守る「バリ機能」を弱めてしまいます。

バリア機能が低下した肌は、いわば鎧を脱いだ無防備な状態です。そこにレーザーを照射すると、治療後の赤みやヒリつき、乾燥といったダウンタイムの症状が通常よりも強く、そして長く続いてしまう傾向があります。さらに、普段は何の問題もなく使えていた化粧水やクリームですら刺激に感じてしまったり、予期せぬ肌荒れやかぶれを引き起こしたりすることも少なくありません。心身ともに余裕がない時期に、長引くダウンタイムや肌トラブルはさらなるストレスとなり、回復を妨げるという悪循環に陥る可能性も否定できないのです。

根拠3|使用する薬剤の赤ちゃんへの安全性が「100%」とは断言できない

そして、私たち医療者が最も重く受け止めているのが、治療に伴い使用する薬剤の、赤ちゃんへの安全性です。シミ取りレーザー治療では、痛みを和らげるための麻酔クリーム(外用薬)や、治療効果を高めるための内服薬・外用薬が処方されることがあります。

例えば、麻酔クリームに含まれるリドカインという成分について。国立成育医療研究センターの情報をはじめ、多くの専門機関では、局所的な使用であれば母乳へ移行する量は極めて微量であり、赤ちゃんへの影響はほとんどないとされています。しかし、それは「100%安全」と同義ではありません。

万に一つ、億に一つの可能性であっても、ゼロリスクであると断言することはできないのです。また、肝斑治療などで処方されるトラネキサム酸などの内服薬は、医師が「治療による有益性が、考えうる危険性を上回る」と判断した場合にのみ投与が検討される「慎重投与」に分類されます。

美容医療という、必ずしも緊急性を要さない領域において、このわずかなリスクを冒すことは適切ではない、というのが多くのクリニックの倫理的な判断です。

クリニックによって見解が違うのはなぜ?

ここまで読んで、「でも、インターネットで探したら『授乳中でもOK』と書いているクリニックがあったけど…」と、かえって混乱してしまった方もいらっしゃるかもしれません。

この見解の違いは、どちらかのクリニックが間違っている、というわけではありません。これは、使用するレーザー機器の種類や出力設定、そして何よりも「安全マージンをどこに置くか」という、医師やクリニックの治療方針・哲学の違いによるものです。

わずかなリスクは許容し、患者様の「早く治療したい」という希望に応える方針のクリニックもあれば、私たちのように、考えうるあらゆるリスクを徹底的に排除し、100%に近い安全性が確保できるタイミングまで待つことを推奨するクリニックもあります。ご自身の価値観に合う方針のクリニックを選ぶことが、後悔のない治療への第一歩と言えるでしょう。

 

授乳中でも諦めないで!今日から始めるシミ対策の最適解

授乳中のシミ取りレーザーが推奨されない理由を知り、「結局、卒乳するまでシミは我慢するしかないの…」と、少し落ち込んでしまったかもしれません。ですが、どうか諦めないでください。授乳期間は、決して美を諦めるための期間ではありません。

むしろ、ホルモンバランスや生活の変化でデリケートになっている肌を優しくいたわり、未来の本格的な治療効果を最大限に高めるための、非常に重要な「守りと育成の期間」なのです。レーザーという選択肢がなくても、今できる最善の選択肢は、実はたくさんあります。未来の自分のために、今日から始められる賢い一手をご紹介します。

最重要!未来の肌も守る「徹底した紫外線対策」

授乳中のシミ対策において、もし「たった一つだけ、最も重要なことを教えてください」と聞かれたら、私たちは迷わず「徹底した紫外線対策です」とお答えします。

なぜなら、紫外線を防ぐことは、今あるシミをこれ以上濃くしないための「最大の防御」であり、新たなシミを作らせないための「最強の予防」だからです。特に、ホルモンの影響でメラノサイトが活性化しているこの時期は、少しの油断が新たなシミの引き金になりかねません。

「外出するときは気をつけているけど…」という方も、ぜひ「一日中、室内でも」を習慣にしてみてください。紫外線の一種であるUVA波は、窓ガラスを通り抜けて肌の奥深くまで到達します。赤ちゃんのお世話で室内で過ごす時間が長くても、日焼け止めは毎朝のスキンケアの最後に必ず取り入れましょう。

SPF30/PA++以上を目安に、赤ちゃんに触れても安心な、石鹸で落とせる低刺激性の製品を選ぶのがおすすめです。忙しくて塗り直しが難しい時は、補助的に「飲む日焼け止め(ニュートロックスサン®など)」を活用するのも賢い選択です。

守りから攻めへ。授乳中でも安心な「美白スキンケア」

紫外線対策という「守り」を固めたら、次はスキンケアで「攻め」の姿勢も取り入れていきましょう。授乳中でも安心して使用できる美白有効成分はたくさんあります。

まず積極的に取り入れたいのが、メラニンの生成を抑え、できてしまったメラニンを還元する働きも期待できる「ビタミンC誘導体」。そして、メラノサイトの活性化を抑える「トラネキサム酸」や、肌の新陳代謝をサポートする「プラセンタエキス」などが配合された化粧品もおすすめです。

一方で、高い美白効果で知られる「ハイドロキノン」や、肌のターンオーバーを促進する「レチノール(ビタミンA)」については、効果が高い分、肌への刺激となる可能性も否定できません。特に現在のデリケートな肌状態では、使用前に必ず医師へ相談するようにしてください。

そして、美白ケアと常にセットで考えていただきたいのが「保湿」です。肌が潤いで満たされ、バリア機能が正常に保たれていること。それこそが美白成分の効果を最大限に引き出す土台となります。美白と保湿は、美しい肌を支える車の両輪であると心得ましょう。

自己判断はNG!「サプリや市販薬」との賢い付き合い方

シミ対策として、身体の内側からのケアを考える方も多いでしょう。市販のサプリメントや医薬品の中には、授乳中でも比較的安全に服用できるとされるものもあります。

代表的なのは、抗酸化作用のある「ビタミンC(アスコルビン酸)」や、メラニンの生成を抑制し、排出を促す「L-システイン」です。これらは多くの製品に含まれており、スキンケアのサポートとして有効な場合があります。

しかし、注意が必要なのは、肝斑改善薬として市販されている「トラネキサム酸」を含む内服薬(トランシーノ®など)です。医療用と同等の成分が含まれているものもあり、母乳への移行などを考慮すると、自己判断での服用は推奨されません。

また、ビタミン剤であっても、過剰摂取は身体に影響を及ぼす可能性があります。「手軽だから」と安易に始めるのではなく、どのような製品であっても、服用を開始する前には必ずかかりつけの産婦人科医や、薬剤師、あるいは私たちのような美容クリニックの医師に相談してください。

一人で悩まないで。クリニックを賢く活用する方法

「授乳中はクリニックに行っても意味がない」なんてことは、決してありません。むしろ、専門家のアドバイスを受けられる絶好の機会です。レーザー治療はできなくても、現在の肌状態を正しく診断し、最適なホームケアをご提案することは可能です。

例えば、クリニックでは、処方薬として高品質な「ビタミン剤(シナールなど)」や、肌のバリア機能を高める「保湿剤(ヒルドイドなど)」をお渡しできます。これらは健康保険が適用される場合もあり、市販品よりも効果的かつ経済的にケアを続けられる可能性があります。

また、クリニックによっては、肌への刺激が非常に少なく、美容成分を肌の奥へ届ける「イオン導入」や、ごくマイルドな「ピーリング」など、授乳中でも施術可能なメニューを用意している場合もあります。何より、専門家に相談することで、一人で抱えていた不安が解消され、前向きな気持ちでスキンケアに取り組めるようになるはずです。

対策方法 安全性・推奨度 具体的なアクションとポイント
徹底した紫外線対策 ◎(最重要) ・室内でも日焼け止め(SPF30/PA++以上)を毎日塗る
・塗り直しが難しい時は、飲む日焼け止めも補助的に活用
・低刺激で石鹸で落とせるタイプがおすすめ
美白有効成分配合のスキンケア ○(推奨) ・積極的に使いたい成分:ビタミンC誘導体、トラネキサム酸、プラセンタエキス
・使用前に医師へ相談したい成分:ハイドロキノン、レチノール
・「美白」と「保湿」を両立させることが重要
内服薬(市販薬・サプリ) △(要相談) ・ビタミンC、L-システイン:比較的安全性が高いとされる
・トラネキサム酸:市販薬(トランシーノ等)を自己判断で服用せず、まずは医師や薬剤師に相談を
クリニックでの処方薬・施術 △(一部可) ・処方薬:ビタミン剤(シナール等)や保湿剤は処方可能な場合が多い
・施術:刺激の少ないイオン導入や一部のピーリングは可能な場合も。まずはカウンセリングで相談を

 

卒乳後の未来のために!今から知っておくべき本格的なシミ治療

授乳期間中にコツコツと続けてきた紫外線対策やスキンケアは、決して無駄にはなりません。その地道な努力は、弱った肌の土台を立て直し、シミがこれ以上濃くなるのを防ぐ、何よりの「守りのケア」です。そしてその努力は、卒乳後に本格的な「攻めの治療」を始める際に、治療効果を飛躍的に高め、ダウンタイムを最小限に抑えるための、最高の準備となります。

そうです、この期間は未来の美肌への大切な「準備・育成期間」なのです。さあ、その努力を自信に変えて、スムーズに次の一歩を踏み出すために。卒乳後に選べる、代表的なシミ治療の種類と特徴について、今から知識という名の準備を始めましょう。

治療法 得意なシミ・お悩み ダウンタイムの目安
ピコレーザー 濃いシミ、薄いシミ、肝斑、そばかす、ADM(後天性真皮メラノサイトーシス) スポット照射:数日〜1週間程度の保護テープ
トーニング:ほとんどなし
光治療(IPL) そばかす、薄いシミ全般、くすみ、赤ら顔、毛穴の開き ほとんどなし(直後にメイク可)
シミが一時的に濃くなる場合がある
ケミカルピーリング くすみ、ニキビ・ニキビ跡、毛穴の黒ずみ、シミ予防 ほとんどなし(直後にメイク可)
施術後に乾燥や赤みが出る場合がある

【最先端治療】ピコレーザー|シミも肝斑もマルチに治療

まずご紹介するのは、近年シミ治療の主流となりつつある「ピコレーザー」です。最大の特徴は、「ピコ秒」という1兆分の1秒単位の極めて短い時間でレーザーを照射できる点にあります。従来のレーザー(ナノ秒)よりも照射時間が短いため、熱による肌へのダメージを最小限に抑えながら、衝撃波でシミの原因であるメラニン色素を非常に細かく砕くことができます。

これにより、これまで治療が難しいとされてきた薄いシミや、熱刺激で悪化しやすい肝斑の治療にも高い効果を発揮します。また、肌への負担が少ないため、痛みや治療後の赤み、かさぶたといったダウンタイムが大幅に軽減されるのも大きなメリットです。

濃いシミをピンポイントで狙う「ピコスポット」、肝斑や顔全体のくすみを改善する「ピコトーニング」、肌のハリや毛穴にも効果的な「ピコフラクショナル」など、多彩な照射モードを使い分けることで、様々なお悩みに対応できる、まさに新世代のシミ治療と言えるでしょう。

【肌全体の若返り】光治療(IPL)|シミ・そばかす・赤ら顔に

「シミだけじゃなく、顔全体のくすみや赤み、そばかすも気になる…」そんな複合的なお悩みをお持ちの方におすすめなのが、「光治療(IPL)」です。IPLとはIntense Pulsed Lightの略で、レーザーが単一の波長の光であるのに対し、IPLは幅広い波長の光を束にして照射する治療です。この幅広い光が、シミの原因であるメラニンだけでなく、赤ら顔の原因であるヘモグロビンや、肌のハリを生むコラーゲンなど、複数のターゲットに穏やかに作用します。

そのため、シミやそばかすを薄くしながら、肌全体のトーンアップ、赤みの軽減、毛穴の引き締め、小じわの改善といった、様々な美肌効果を一度に期待できるのが魅力です。

治療後のダウンタイムはほとんどなく、直後からメイクも可能なため、日常生活への影響を最小限にしたい忙しいママにもぴったりの治療法です。マイルドな治療のため、効果を実感するまでには複数回の治療が必要となりますが、回数を重ねるごとに肌全体のコンディションが向上していくのを実感できるでしょう。

【肌質改善の土台作り】ケミカルピーリング|シミ予防と透明感アップ

レーザーや光治療が、今あるシミを直接的に破壊する「攻撃的」な治療だとすれば、「ケミカルピーリング」は、肌のコンディションを整え、シミができにくい健康な肌環境へと導く「土台作り」の治療と言えます。これは、フルーツ酸(AHA)やサリチル酸(BHA)などの薬剤を肌に塗り、古くなった角質や毛穴の汚れを穏やかに溶かして取り除くことで、乱れがちな肌のターンオーバー(新陳代謝)を正常化させる治療法です。

ターンオーバーが整うと、メラニンが肌に溜まりにくくなるため、新たなシミの予防に繋がります。また、肌表面のゴワつきやくすみが一掃されることで、肌の透明感がアップし、化粧水などのスキンケア成分の浸透も高まります。

ケミカルピーリング単体でも美肌効果はありますが、レーザーや光治療の前にピーリングを行うことで、治療光の浸透が良くなり、相乗効果でより高いシミ改善効果が期待できます。授乳中に低下した肌の基礎力を回復させるための、最初の一歩としても最適な治療です。

 

授乳中のシミに関するよくあるご質問(Q&A)

ここまで、授乳中のシミ取り治療のリスクから、今すぐ始められる安全なセルフケア、そして卒乳後の本格的な治療法まで、順を追って詳しく解説してきました。心の中にあったシミへの漠然とした不安が、具体的な知識へと変わり、少しでも前向きな気持ちになっていただけていれば幸いです。

最後に、これまでの内容を踏まえた上で、カウンセリングの場などで皆様から特によくいただくご質問をまとめました。最後の疑問を解消し、すっきりとした気持ちで未来への一歩を踏み出すお手伝いができれば嬉しく思います。

Q. シミ取り治療は、具体的にいつから再開できますか?

A. 早く治療を始めたいお気持ちは、私たちも痛いほど理解しております。一つの明確な目安として、「卒乳後、月経(生理)が2〜3回順調に来て、ホルモンバランスが安定した頃」をおすすめしています。

卒乳してすぐに治療を開始しないのには、理由があります。卒乳直後は、身体が「授乳モード」から「通常モード」へと切り替わる、いわば移行期間の真っ只中にあります。体内のホルモンバランスはまだ不安定で、肌状態も揺らぎやすいため、シミが濃くなるリスクや肌トラブルのリスクは依然として残っている状態です。

月経周期が以前のように安定してくることは、女性ホルモンの分泌が正常化し、身体が出産前の状態に近づいてきたことを示す、分かりやすいサインとなります。出産と育児という大仕事を乗り越えたご自身の身体をまずは十分にいたわり、回復させてあげることが、結果的に最も安全で高い治療効果を得るための最短ルートになります。焦らず、万全のコンディションで治療をスタートさせましょう。

Q. 妊娠中に濃くなったシミは、放っておいたらもっと濃くなりますか?

A. そのご不安、よく分かります。ですが、嬉しい側面もありますのでご安心ください。妊娠・授乳期に濃くなったシミ、特に頬骨あたりにもやもやと広がる「肝斑」は、その主な原因がホルモンバランスの変動にあるため、卒乳してホルモンの状態が落ち着くことで、特別な治療をしなくても自然と薄くなるケースが少なくありません。

ただし、「何もしなくても大丈夫」という意味では決してありません。シミの運命を左右する最大の鍵は、本編でも繰り返しお伝えしてきた「紫外線対策」です。ホルモンの影響が落ち着いても、無防備に紫外線を浴び続けてしまえば、シミの色素を作るメラノサイトは常に刺激され続けることになります。その結果、薄くなるはずだったシミがそのまま居座ってしまったり、老人性色素斑のように紫外線が主な原因であるシミは、かえって濃くなってしまったりする可能性も十分にあります。

「放置」するのではなく、「丁寧にケアをしながら様子を見る」。これが産後のシミとの正しい付き合い方です。日々の紫外線対策と保湿ケアを徹底することが、シミを自然に薄くするチャンスを最大限に引き出し、未来の治療効果も高めてくれます。

 

まとめ

授乳中のシミ取り治療について、そのリスクと安全な対策を詳しく解説してきましたが、心の中の疑問や不安は解消されたでしょうか。ホルモンバランスの影響、産後のデリケートな肌状態、そして万が一の薬剤リスク。これらが、授乳中のレーザー治療が推奨されない主な理由です。

しかし、繰り返しになりますが、これは決して「諦めの期間」ではありません。むしろ、この時期は未来がより輝くための大切な「準備と育成の期間」と捉えることができます。今できる最善策は、徹底した紫外線対策と保湿を基本としたスキンケアで肌の土台を整え、守り抜くこと。それが、卒乳後に本格的な治療をスタートする際の、何よりの近道となり、治療効果を最大限に高める鍵となるのです。

一人で悩みを抱え込まず、まずは現在の肌状態に合ったスキンケア方法や、卒乳後を見据えた治療計画について、専門家に相談してみましょう。授乳中でも安心して取り入れられるケアの提案を通じて、今の肌とそして未来の肌に真摯に向き合えるかもしれません。

アラジン美容クリニックでは、美容医療および美容皮膚における長年の経験や博士号を持つ知見より、出逢う皆様のお一人ひとりに最適な施術を提供する「オンリーワン」を目指すカウンセリングを実施し、余計な情報や提案をせず、「ウソのない」美容医療で、必要な施術のみをご提案しております。

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