ルビーレーザーとピコレーザーの違い?シミの種類別に選ぶ波長とパルス幅

美容皮膚

ピコレーザーとルビーレーザーは、照射時間(パルス幅)の異なる2種類のシミ取りレーザーです。ルビーレーザー(Qスイッチルビーレーザー)がナノ秒(10億分の1秒)単位でメラニン色素を熱で破壊するのに対し、ピコレーザーはその1000分の1にあたるピコ秒(1兆分の1秒)単位の超短パルスでメラニンを衝撃波的に微細破砕します。

「どちらが良いか」は一概には言えず、最適な選択はシミの種類・深さ・濃さと、使用する波長の組み合わせによって決まります。

多くの表皮性のシミ(老人性色素斑・そばかすなど)では、皮膚への熱負荷が小さくダウンタイムが短いピコレーザーが選ばれやすい傾向があります。一方、Qスイッチルビーレーザーは694nmという特定波長でメラニンへの吸収率が高く、濃い色素病変に対する即効性も評価されています。特に注意が必要なのは、老人性色素斑と見分けが難しい肝斑が混在するケースで、スポット照射によってかえって悪化するリスクがあります。

本記事は美容皮膚科の医師監修のもと、パルス幅・波長・シミの種類別の適応を整理し、費用・ダウンタイム・クリニック選びの視点まで解説します。

 

ピコレーザーとルビーレーザーの違い

2つのレーザーを分ける最大の要因は、照射時間、すなわち「パルス幅」の長さです。Qスイッチルビーレーザーがナノ秒(10億分の1秒)単位で照射するのに対し、ピコレーザーはその1000分の1以下にあたるピコ秒(1兆分の1秒)単位で照射します。

このパルス幅の差がメラニンへの作用機序・皮膚への熱負荷・ダウンタイムの長さを左右するため、「どちらが優れているか」という単純な比較よりも、シミの種類と状態で判断する視点が求められます。本章では作用機序・ダウンタイム・費用の3軸で両者の特徴を整理します。

この章のポイント
・パルス幅の差は1000倍以上(ナノ秒 vs ピコ秒)
・熱破壊と衝撃波破砕で組織への影響が異なる
・ダウンタイム・費用はシミの種類・クリニックで変わる

パルス幅と作用機序の違い

Qスイッチルビーレーザーのパルス幅はナノ秒(10億分の1秒)単位、ピコレーザーはピコ秒(1兆分の1秒)単位です。実際の機器では、Qスイッチルビーレーザーが数十ナノ秒程度であるのに対し、ピコレーザーは数百ピコ秒程度と、およそ数十分の1から百分の1の短さになります。この照射時間の差によって、メラニンへの作用が「熱で破壊する(光熱分解)」か「衝撃波で微細に砕く(光機械作用)」かという機序の違いが生まれます。

Qスイッチルビーレーザーが採用する「光熱分解」とは、短時間照射でメラニン粒子を急速に加熱し、色素を熱によって破壊する原理です。即効性が高く評価されているレーザーですが、ナノ秒レベルのパルス幅では熱の一部が周辺組織にも拡散するため、施術後に炎症・かさぶた・色素沈着が生じやすい傾向があります。

ピコレーザーは超短パルスにより熱が拡散する前に照射が終わるため、エネルギーがメラニン粒子内で衝撃波(光音響波)として作用し、粒子を機械的に微細に砕きます。砕かれた色素は体内の貪食細胞によって徐々に排出され、熱拡散が抑制されることで周辺組織へのダメージが軽減されるとされています。

ダウンタイムと痛みの違い

ピコレーザーはQスイッチルビーレーザーと比べて熱負荷が小さいため、かさぶたや赤みが出にくい傾向がありますが、照射出力・部位・シミの濃さによって個人差があります。スポット照射の場合、どちらも施術後に一定のダウンタイムが生じることを前提に計画しておくことが安心です。

Qスイッチルビーレーザーで濃いシミにスポット照射を行うと、照射部位は当日〜翌日に赤みが出て、数日後に黒ずんだかさぶた状になります。かさぶたは一般的に2週間前後で自然に脱落するとされており、その間はテープ保護と紫外線対策を続けることが基本です。かさぶたを無理に触ったり剥がしたりすると、「炎症後色素沈着(PIH)」が生じるリスクが上がります。

ピコレーザーのスポット照射でも、照射出力が高い場合や色素が濃い場合にはかさぶたが生じることがあります。ただし同程度のシミを対象とした場合、熱ダメージが少ない分ダウンタイムが短い傾向があるとされています。痛みについては個人差が大きく、どちらも輪ゴムで弾かれるような刺激感を伴うことが多く、冷却ガスや表面麻酔を用いることで軽減できるクリニックもあります。

費用・回数の目安

美容目的のシミ治療は、ピコレーザー・Qスイッチルビーレーザーともに自費診療が基本です。費用はシミの数・大きさ・クリニックによって大きく異なるため、以下はあくまで一般的な目安として参考にしてください。

スポット照射の費用は、一般的な目安として1か所あたり数千円からとされていますが、シミの大きさ・使用機種・クリニックの料金体系によって変わります。治療回数については、表皮性の老人性色素斑やそばかすでは1〜2回で改善が見込まれることが多いとされていますが、色素が濃い場合や再発例では複数回が必要になる場合があります。

保険適用については、太田母斑・異所性蒙古斑・外傷性色素沈着症に対するQスイッチ付ルビーレーザー照射療法が5回を限度に、扁平母斑が2回を限度に算定されます(診療報酬点数表 J054-2)。老人性色素斑・そばかすなどの美容目的照射は保険対象外です。

ピコレーザーは機種によって国内の薬事承認状況が異なります。厚生労働省の承認を取得している機種がある一方、国内未承認のまま医師の責任において輸入・使用されている機種もあります。また承認機であっても、シミ・くすみ等の美容目的照射は承認された適応の範囲外となる場合があります。施術前に、使用機種の承認状況と適応の範囲をクリニックで確認することが前提になります。

2つのレーザーの主な違いを以下の表にまとめます。実際の適応はシミの種類・状態によって異なるため、参考としてご活用ください。

比較項目 Qスイッチルビーレーザー ピコレーザー
パルス幅 ナノ秒(10億分の1秒) ピコ秒(1兆分の1秒)
主な波長 694nm 532nm・1064nm等
作用機序 光熱分解(熱破壊) 光機械作用(微細破砕)
かさぶた傾向 出やすい傾向 比較的出にくい傾向
費用傾向 自費・クリニック次第 自費・クリニック次第
向くシミの例 濃い表皮〜真皮病変 表皮性シミ・くすみ

上記はあくまで一般的な傾向の整理です。実際の適応はシミの深さ・状態・クリニックの機器仕様によって異なります。

 

波長とシミの深さで決まる適応

前章でパルス幅の違いを理解したうえで、次に押さえるべきなのが波長の考え方です。波長はレーザー光が皮膚の何層目まで届くか、そしてメラニン粒子にどれほど強く吸収されるかを決める要素であり、シミの深さとの組み合わせが適応機種の選択を左右します。

694nm(ルビー)・532nm・1064nmといった数値が示すものを理解すると、なぜ同じシミ取りでも機種や照射プロトコルが変わるのかが見えてきます。本章では波長別の特徴と、ルビーレーザーという言葉が持つ2つの意味を整理します。

この章のポイント
・波長で皮膚の到達深度とメラニン吸収率が変わる
・532nm表皮・694nm中層・1064nm真皮に対応
・「ルビー」は機器名と波長名の2つの意味を持つ

波長別の特徴(532/694/1064nm)

レーザーの波長(nm)は、光が皮膚に届く深さとメラニンへの吸収率を決めます。532nmは表皮のメラニンへの吸収率が高く、694nmは表皮から中層にかけて、1064nmは真皮まで届く深達性を持つという特性の違いがあります。

532nmはピコレーザーや従来のQスイッチレーザーで使用されるグリーン波長です。波長が短いほど皮膚への到達深度は浅くなりますが、表皮に多く存在するメラニンへの吸収率が高くなります。そばかすや薄い表皮性のシミに対して反応しやすい一方、ヘモグロビンにも吸収されやすいため、照射後の赤みが出る場合があります。

694nmはルビー波長と呼ばれる赤色のレーザー光で、Qスイッチルビーレーザーに搭載されている波長です。メラニンへの吸収率が高く、かつヘモグロビンへの吸収が低い特性を持ちます。これにより周辺の血管への影響を抑えつつ色素に集中して作用することができ、表皮から中層の色素病変への適応に用いられています。

1064nmは近赤外線の波長で、メラニンへの吸収率は532nmや694nmと比べると低いものの、真皮まで到達できる深達性が特徴です。PicoWayなどのピコレーザー機種では1064nmモードを使用することで、ADMや太田母斑など真皮に及ぶ色素病変にアプローチできます。低出力・広範囲照射のトーニングモードとしての使用も多く、薄いシミや肌全体のトーンケアにも応用されています(適応外使用含む)。

シミが皮膚のどの層にあるかによって、適した波長も変わります。老人性色素斑やそばかすのように表皮に色素が集中している場合は、532nmや694nmの表皮親和性の高い波長が中心となります。一方、ADMや太田母斑のように真皮まで色素が及ぶ病変には深達性のある1064nmが必要とされ、複数回の照射を前提に計画されることが多いとされています。

ルビーという言葉の2つの意味

ルビーレーザーという言葉は、機器の名称(Qスイッチルビーレーザー)としての使い方と、694nmという波長値を指す使い方の2通りがあり、両者が混同されやすい点に注意が必要です。

機器名としてのルビーレーザーは、694nm波長をQスイッチ(ナノ秒パルス)方式で照射する装置を指します。一般的にルビーレーザーで治療するというときはこの機器を使用した施術を意味し、694nmのメラニン高吸収・ヘモグロビン低吸収という特性を活かしたシミ治療機として長年使用されてきた実績があります。

一方、波長値としての694nmは必ずしもQスイッチ(ナノ秒)方式の機器だけに搭載されているわけではありません。一部のピコレーザー機種にも694nm波長モードが搭載されており、ピコ秒の超短パルスで694nmを照射することができます。ピコかルビーかという二項対立で語られることがありますが、機種によってはピコレーザーで694nm照射を行う選択肢も存在します。どの波長をどのパルス幅で使用するかという組み合わせで捉えることが、より正確な理解につながります。

主な波長の特徴を以下の表に整理します。シミの深さや種類によって適した波長が異なるため、診断に基づいて適応を判断することが基本となります。

波長 到達層の目安 高吸収対象 向く症状の例
532nm 表皮 表皮メラニン そばかす・薄い表皮性シミ
694nm(ルビー) 表皮〜中層 メラニン全般 老人性色素斑・表皮性病変
1064nm 真皮 深部メラニン ADM・太田母斑・真皮病変

上記は一般的な特性の整理であり、実際の適応は症状・照射条件・使用機種によって異なります。

 

シミの種類別の機種の選び方

前章で波長と皮膚の到達深度の関係を確認しました。機種・波長の知識を実際の選択につなげるには、シミの種類ごとに適した照射方針を把握することが必要です。

老人性色素斑・そばかすのように表皮に色素が集中するケースと、ADMのように真皮まで及ぶ色素では、適応する波長・照射プロトコル・治療回数の考え方が大きく異なります。ここでは代表的なシミの種類別に、一般的な適応の考え方を整理します。

この章のポイント
・老人性色素斑・そばかすはスポット照射が中心
・ADM等の真皮病変は1064nm・複数回が基本
・くすみ・全顔ケアはピコトーニングが選択肢

老人性色素斑・そばかす

老人性色素斑・そばかす(雀卵斑)は色素が表皮に存在するため、Qスイッチルビーレーザーまたはピコレーザーのスポット照射が主な選択肢となります。1〜2回の照射で改善が見込まれることが多いとされていますが、シミの濃さや大きさによって回数は変わります。

老人性色素斑は、紫外線の長年の蓄積によって表皮のメラニン産生が局所的に増加した状態です。境界が明瞭な茶〜褐色の色素斑で、694nmや532nmのような表皮親和性の高い波長との反応性が高いとされています。スポット照射後にかさぶたが形成され、2週間前後で脱落するとともに色素が薄れていく経過をたどります。表皮性のシミは1〜2回の照射で改善が見込まれることが多いとされていますが、色素の濃さや大きさによって回数は変わります。

そばかす(雀卵斑)は遺伝的要素が強く、鼻・頬骨周辺に淡褐色の小さな色素斑が散在するのが特徴です。老人性色素斑と同様に表皮性ですが、紫外線刺激による再発・再増加が起こりやすい傾向があります。スポット照射で一時的な改善を得ることができますが、施術後も日焼け止めなどの紫外線対策を継続しないと再発リスクがあります。肌質・色素の濃さによっては複数回の施術が必要になる場合があります。

ADM・真皮のシミ

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は色素が真皮深部に存在するため、深達性のある1064nm波長を用いた複数回の照射が一般的な治療方針とされています。

ADMは頬骨に沿って左右対称に薄青〜灰色の色調が現れる色素病変で、20〜40代女性に多くみられます。老人性色素斑や肝斑と混在することがあり、視診だけでは鑑別が難しい場合があります。真皮に存在するメラノサイトが色素産生に関与しているため、表皮性のシミに比べて治療の回数・期間がかかり、1回の照射で取り切れるものではない点を理解したうえで治療計画を立てることが基本です。

1064nmの深達波長を持つピコレーザー(PicoWay等は太田母斑等の適応で薬機法承認)が、真皮の色素病変にアプローチするために用いられます。ただし真皮性病変の治療は期間・費用・改善の程度ともに個人差が大きく、途中で照射をやめると色素が残ることもあります。ADMが疑われる場合は、肝斑や老人性色素斑との混在の有無を含めて専門医の診断を受け、治療計画を確認したうえで施術を開始することが基本となります。

薄いシミ・くすみ・全顔ケア

薄いシミ・肌のくすみ・全顔のトーン改善には、スポット照射とは異なる低出力・広範囲照射のプロトコル、ピコトーニングが選択肢の一つとなります。

ピコトーニングは、ピコレーザーを低出力で広範囲に繰り返し照射することで、単発除去を目的とせずに薄いシミ・くすみ・肌のトーンを整えることを目指す照射方式です。スポット照射のようなかさぶたが生じにくく、ダウンタイムが少ない状態で複数回の施術を重ねられる点が特徴です。なお、シミ・くすみの美容目的での改善は薬機法上の適応外使用に該当するため、施術前にクリニックで適応の範囲を確認してください。

肝斑を合わせて持つ方にとって、低出力トーニングは高出力スポット照射に比べて安全性の面から選ばれることがあります。肝斑があるにもかかわらず高出力でスポット照射を行うと、メラノサイトが刺激されてかえって色素が濃くなるリスクがあるとされています。肝斑が混在している場合は、低出力トーニングとトラネキサム酸内服を組み合わせて色素を安定させることが先決とされています。

主なシミの種類と適応の考え方を以下の表に整理します。実際の診断・治療計画は専門医の判断に委ねることが基本です。

シミの種類 適応機種・波長の目安 回数の目安 注意点
老人性色素斑 ピコ・Qスイッチ(694/532nm) 1〜2回が多い PIH・再発リスク
そばかす(雀卵斑) ピコ・Qスイッチ(694/532nm) 複数回になることも 紫外線で再発しやすい
ADM ピコ1064nm 複数回・期間が必要 肝斑・老人性色素斑との鑑別
肝斑 ピコトーニング 数回〜(個人差大) スポット照射は悪化リスク

上記はあくまで一般的な適応の整理です。シミの種類は複数混在することも多く、照射の順番・プロトコルは専門医が診断したうえで判断します。

 

肝斑がある場合の注意点と診断の重要性

前章でシミの種類別の適応を整理しましたが、特に注意が必要なのが肝斑の存在です。肝斑は老人性色素斑と混在することが多く、見た目だけでは鑑別が難しい場合があります。

肝斑があるにもかかわらずスポット照射を行うと、メラノサイトが刺激を受けて色素産生が活発になり、悪化する可能性があります。この章では、肝斑がレーザー刺激で悪化しうるメカニズムと、機種選びより診断が先である理由を解説します。

この章のポイント
・肝斑はレーザー刺激でメラノサイトが活性化しうる
・老人性色素斑との鑑別が治療成否の分かれ目
・肝斑安定にはトーニング+トラネキサム酸内服が基本

なぜ肝斑はレーザーで悪化しうるか

肝斑では、女性ホルモンや紫外線・摩擦などによって過剰に活性化したメラノサイトが色素を過剰産生している状態が続いており、レーザーの熱や衝撃がさらなる刺激となって色素産生を増加させるリスクがあります。

メラノサイトとは、皮膚の基底層に存在してメラニンを生成する細胞です。老人性色素斑のように色素が局所的に蓄積した状態とは異なり、肝斑ではメラノサイト自体が持続的に過剰活性化した状態にあります。このメラノサイトにレーザーを照射すると、熱や衝撃をさらなる刺激として受け取り、色素産生がより活発になる可能性があるとされています。

このリスクから、肝斑に対して高出力のスポット照射は原則として避けることが一般的な方針とされています。肝斑の治療では、低出力で広範囲に照射するレーザートーニング(またはピコトーニング)とトラネキサム酸内服を組み合わせ、色素を安定させてから他のシミへの対応に移行するという順序が基本とされています。

トラネキサム酸は抗プラスミン作用を持ち、メラノサイトの活性化を抑制する働きがあるとされています。なお、医療用トラネキサム酸の承認された効能・効果に肝斑は含まれておらず、肝斑を目的とした処方は適応外使用にあたり全額自費となります。内服で肝斑の色素を徐々に安定させながらトーニングを並行する方針は、高出力スポット照射に伴う悪化リスクを避ける手段として選ばれますが、効果・改善の程度には個人差があります。

機種選びより診断が先

シミ取りにおいてルビーかピコかという機種の選択は、シミの種類が正確に診断されていることを前提として初めて意味を持ちます。種類の見極めを経ずに機種だけを先に決めることが、シミ取り失敗の主な要因の一つとされています。

老人性色素斑と肝斑は同じ頬に混在することが珍しくなく、50代以降では特にその傾向が強まります。色調が似ているために自己判断すると、肝斑を老人性色素斑と誤認してスポット照射を行うリスクがあります。シミ取りレーザーで結果が伴わない主な要因としては、シミの種類の誤認、照射出力の設定の誤り、施術後のアフターケア不足が挙げられます。いずれも初診時の診断の精度が起点となるため、診断が治療全体の成否に直結します。

クリニックのカウンセリングでは、ダーモスコープや医師の視診によってシミの種類が鑑別されます。複数種のシミが混在している場合は、肝斑の安定が確認されてからスポット照射に移行する段階的な治療計画が立てられることが多いとされています。来院時には、どのシミにどの機種・波長を使うか、施術の順序と各段階の費用の目安を確認しておくことが、治療の見通しを立てるうえで助けになります。

老人性色素斑と肝斑の主な見分けポイントを以下の表に整理します。視診だけでの鑑別には限界があり、最終的な判断は専門医が行います。

確認項目 老人性色素斑 肝斑
好発部位 顔全体(散在) 頬・額・口周り
左右対称性 非対称が多い 対称性が高い傾向
境界の明瞭さ 比較的明瞭 境界がぼやけやすい
色調の傾向 茶〜褐色(局所的) 薄茶〜灰褐色(広範)
適した治療 スポット照射 トーニング+内服

上記はあくまで一般的な傾向の整理であり、混在・例外も多くあります。自己判断での色素の種類の特定は難しいため、専門医の診断を基に治療方針を確認してください。

 

費用・回数・ダウンタイムとクリニックの選び方

前章で診断の重要性と肝斑への注意点を確認しました。機種と診断の方針が整ったうえで次に把握しておきたいのが、費用・回数の目安と施術後のダウンタイムの実際です。

レーザー治療での後悔を避けるうえでは、クリニック選びの視点も欠かせません。本章では費用・ダウンタイム・院選びの3軸で実務的な情報を整理します。

この章のポイント
・費用・回数はクリニック・症状によって変動する
・かさぶた期間は2週間前後・テープ保護が基本
・診断力・説明の丁寧さがクリニック選びの基準

費用と回数の目安

シミ取りレーザーは美容目的の場合、ピコ・Qスイッチルビーともに自費診療が基本です。費用はシミの種類・大きさ・使用機種・クリニックによって異なるため、以下は一般的な目安としての参考にしてください。

スポット照射の費用は、一般的な目安として1か所あたり数千円からとされており、シミの大きさや照射箇所数、クリニックの料金体系によって変わります。全顔の取り放題メニューを設定しているクリニックでは数万円の相場感が示される場合もありますが、料金の算出方法はクリニックによって異なります。カウンセリング時に何か所をいくらで行うかの見積もりを確認しておくことが費用感の把握に直結します。

治療回数の目安としては、老人性色素斑・そばかすなどの表皮性シミでは1〜2回で改善が見込まれることが多いとされています。真皮性のADMや太田母斑など深い色素病変では複数回にわたることが前提となり、費用も比例して増えます。

なお、太田母斑・異所性蒙古斑・外傷性色素沈着症などの疾患には、Qスイッチルビーレーザーで5回まで保険が適用となる場合があります。この場合は皮膚科・形成外科での診断を経ることが基本となります。

ダウンタイムとアフターケア

スポット照射後は施術部位にかさぶたが形成され、一般的に2週間前後はテープ保護を続けながら自然脱落を待ちます。施術後のケアの質が「炎症後色素沈着(PIH)」の予防と治療結果の安定に影響するとされています。

施術当日〜翌日にかけて照射部位に赤み・熱感が生じることがあります。数日後には黒いかさぶた状になりますが、この時期に無理に触れたり剥がしたりするとPIHが生じるリスクが上がります。かさぶたの脱落期間は一般的に2週間前後とされていますが、照射出力・部位・個人の皮膚状態によって前後します。

かさぶた期間中および脱落後の基本ケアは、テープ保護・保湿・紫外線対策の3点です。紫外線はPIHを悪化させる主な要因のため、日焼け止めに加え帽子・日傘の使用が推奨されます。保湿は皮膚のバリア機能を維持して炎症の長期化を抑制する目的で行います。クリニックから指定されたケア方法がある場合は、その指示を優先してください。

施術後のダウンタイム経過とセルフケアの目安を以下の表に整理します。経過には個人差があるため、クリニックからの指示を優先してください。

時期 肌の状態 セルフケアの目安
当日〜翌日 赤み・熱感 冷却・患部を触れない
2〜5日目 かさぶた形成 テープ保護・保湿
1〜2週間 かさぶた維持 紫外線対策・保湿継続
2週間以降 自然脱落・色素薄化 日焼け止め継続

上記はスポット照射後の一般的な目安です。ピコトーニングなど低出力照射ではかさぶたが生じないことが多く、アフターケアの内容が異なる場合があります。

クリニック選びのチェックポイント

シミ取りレーザーのクリニック選びでは、使用機器の世代よりも、シミの種類を正確に診断しているか、治療計画と費用の説明が丁寧かどうかという点が判断の基準になります。

クリニックのカウンセリングでは、シミの種類(老人性色素斑・肝斑・ADMなど)をダーモスコープや視診で鑑別しているか、照射機種と波長の選択理由を説明してくれるかを確認することが出発点です。費用・回数の見積もりが明示されているか、ダウンタイム中のアフターケア指示が具体的かどうかも、施術後の結果に直結するポイントです。

使用機器の薬事承認の適応と、美容目的照射が適応外使用に該当することを説明したうえで施術を案内しているクリニックは、法的な透明性という観点から信頼性の指標の一つになります。過去にレーザー施術を受けたことがある場合は、使用機種・照射部位・その後の経過について事前に整理しておくと、カウンセリング時の診断の参考になります。

初回カウンセリングは複数のクリニックで受けて、シミの診断内容と治療計画の説明を比較してから施術先を決めると、選択の精度が高まります。

 

シミ取りレーザーのよくある質問

ルビーレーザーとピコレーザーに関してよく寄せられる質問をまとめました。個別の状況によって異なる場合があるため、詳細はカウンセリングでご確認ください。

ルビーレーザーとピコレーザー、シミ取りに効果が高いのはどっちですか

どちらが優れているとは一概には言えません。表皮性シミではダウンタイムが短いピコが選ばれやすく、濃い色素病変にはQスイッチルビーが適する場合もあります。最適解はシミの種類・深さ・診断で決まります。

ピコレーザーはルビーレーザーよりダウンタイムが短いですか

同程度のシミを対象とした場合、熱負荷が少ない分ダウンタイムが短い傾向があるとされています。ただし照射出力・部位・シミの濃さによって個人差があり、スポット照射ではかさぶたが生じることもあります。

1回でシミは消えますか

老人性色素斑・そばかすなどの表皮性シミでは1〜2回で改善が見込まれることが多いとされています。色素が深い場合や再発例では複数回が必要になる場合があり、種類・濃さによって異なります。

肝斑にルビーレーザーを当てても大丈夫ですか

肝斑へのスポット照射は悪化リスクがあり、原則として避けることが基本とされています。肝斑には低出力のレーザートーニングとトラネキサム酸内服を組み合わせる方針が一般的です。

シミ取りレーザーは保険が使えますか

老人性色素斑・そばかすなどの美容目的は保険対象外です。太田母斑・異所性蒙古斑など一部の疾患に対してはQスイッチルビーレーザーで5回まで保険適用となる場合があります。

治療後に気をつけることは何ですか

テープ保護・保湿・紫外線対策の3点が基本です。かさぶたは2週間前後で自然脱落するため触れずに待ち、日焼け止めと帽子・日傘で紫外線を防ぐことで色素沈着のリスクを下げられます。

 

まとめ

ピコレーザーとルビーレーザーのどちらが向くかは、新しい機種か古い機種かではなく、シミの種類・深さ・診断の精度によって変わります。

表皮性の老人性色素斑やそばかすにはダウンタイムが短いピコが選ばれやすく、694nmの波長で濃い色素病変に高い吸収率を持つQスイッチルビーが適するケースも存在します。真皮に達するADMには1064nmの深達波長を持つ機種が用いられ、肝斑が混在する場合は低出力トーニングとトラネキサム酸内服を組み合わせて色素を安定させることが優先されます。

機種を選ぶ前に、まず自分のシミが何の種類かを専門医に診断してもらうことが、満足のいく結果への最短経路です。施術後はかさぶたの期間にテープ保護を行い、色素沈着(炎症後色素沈着)を防ぐために保湿と紫外線対策を2週間程度続けることが基本となります。

アラジン美容クリニックでは、美容医療および美容皮膚における長年の経験や博士号を持つ知見より、出逢う皆様のお一人ひとりに最適な施術を提供する「オンリーワン」を目指すカウンセリングを実施し、余計な情報や提案をせず、「ウソのない」美容医療で、必要な施術のみをご提案しております。

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参考文献・出典

  • 厚生労働省「診療報酬点数表 J054-2 皮膚レーザー照射療法」(Qスイッチ付ルビーレーザー照射療法は太田母斑・異所性蒙古斑・外傷性色素沈着症について5回、扁平母斑について2回を限度に算定)
  • 日本皮膚科学会・日本美容皮膚科学会ほか「美容医療診療指針(令和2年度厚生労働行政推進調査事業費補助金)」(肝斑へのレーザー照射による増悪リスク、トラネキサム酸内服の位置づけ)
  • 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」(未承認医療機器を用いる自由診療における承認状況・入手経路・国内承認機の有無等の明示)
  • シネロン・キャンデラ株式会社「PicoWay 製品情報」(532nm/730nm/1064nmの3波長、パルス幅500ピコ秒未満)
  • Quanta System「Discovery PICO 製品情報」(532nm/694nm/1064nmの3波長を搭載したピコ秒Nd:YAGレーザー)

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