Qスイッチルビーレーザーはテープ貼らないダメ?仕事で隠したい人のための透明保護フィルム活用術

美容皮膚

Qスイッチルビーレーザーは、老人性色素斑やADM(後天性真皮メラノサイトーシス)に対し、鋭い切れ味と確実な効果を持つ治療法として長年第一線で支持されています。しかし、高い治療効果の代償として、施術後約10〜14日間の「テープ保護」というダウンタイムが避けられません。

多くの患者が、紫外線量が低下する秋冬や、年末年始・ゴールデンウィークといった長期休暇を狙って施術を計画しますが、カレンダー通りの休暇が取れるとは限らず、また突発的なビジネス対応が必要になることも少なくありません。あるいは、紫外線が強まる季節に差し掛かり、焦りを感じながら治療を検討する場合もあるでしょう。

いかなる季節であっても、施術直後から再開される社会生活において、「顔にテープを貼ったまま仕事ができるか」という懸念は、治療への最後の一歩を躊躇させる最大の障壁となります。

ここでは、医学的に推奨される「テープ保護の意義」を正しく理解した上で、どうしてもテープを貼れないビジネスパーソンや、接客業に従事する方のために、透明保護フィルム(エアウォールUV等)を活用した実践的なメソッドとリスク管理について、専門的な見地から詳述します。

 

Qスイッチルビーレーザーでテープ保護が推奨される医学的理由

Qスイッチルビーレーザーは、694nmという波長特性を持ち、メラニン色素に対して極めて高い吸光度(反応性)を示します。この強力なエネルギーは、ターゲットとなるシミ(メラニン)を瞬時に破壊する一方で、表皮層にも熱変性による一時的な損傷を与えます。

施術後の皮膚は、例えるなら「屋根が吹き飛ばされた家」のような無防備な状態であり、外部環境からの刺激をダイレクトに受けてしまいます。この時期にテープ保護を行うことは、単なる「傷隠し」といった審美的な目的ではなく、正常な皮膚構造を取り戻し、治療の最終ゴールである「シミのない肌」へ到達するための不可欠な医療プロセスです。

~この章のポイント~
・紫外線と物理的刺激から守り色素沈着リスクを最小限に抑える
・湿潤環境を保つことで皮膚の再生スピードが格段に早まる
・保護を怠ると「戻りジミ」が長引く可能性が高まる

テープ保護が担う3つの生理学的役割

レーザー照射後の皮膚管理において、テープ保護(被覆材の使用)には、大きく分けて「遮光」「物理的保護」「湿潤環境の維持」という3つの重要な医学的意義があります。これらは相互に関連し合い、創傷治癒(キズの直り)の質を決定づけます。

①紫外線(UV)の物理的遮断

レーザー照射後の皮膚は、角質層というバリア機能が一時的に欠如しています。この状態で紫外線に曝露されることは、メラノサイト(色素細胞)を強烈に刺激し、過剰なメラニン生成を誘発することを意味します。

日焼け止め(サンスクリーン剤)も有効ですが、創傷面に直接化学成分を塗布することは刺激となるリスクがあります。また、汗や皮脂による塗りムラも避けられません。物理的な遮光テープによる保護は、紫外線防御における最も確実かつ安全な「盾」として機能し、炎症後色素沈着(PIH)の発生リスクを物理的に低減させます。

②物理的摩擦からの保護と安静

日常生活には、無意識の摩擦が無数に存在します。洗顔時のタオルの接触、就寝時の枕との摩擦、そして不織布マスクによる擦れなど、微細な物理的刺激はすべて炎症を増悪させる要因となります。

特に照射直後の皮膚において、かさぶた(痂皮)が早期に無理やり剥がれてしまうことは避けなければなりません。テープ保護は、患部を物理的にカバーすることでこれらの摩擦を無効化し、皮膚が再生するまでの期間、患部の安静を保つ役割を果たします。

③湿潤環境(モイストヒーリング)の維持

近年の創傷処置のスタンダードとなっているのが「湿潤療法(モイストヒーリング)」です。傷口から滲み出る液(滲出液)には、細胞の増殖や再生を促す「細胞成長因子」が豊富に含まれています。

ハイドロコロイドなどの被覆材を用いて患部を密閉し、この滲出液を留めることで、乾燥させて治す(ドライヒーリング)場合に比べて上皮化(皮膚の再生)のスピードが格段に早まります。また、湿潤環境下ではかさぶたが厚くなりにくく、傷跡がきれいに治りやすいという特徴があります。

テープ保護「なし」のリスクとPIH発生率の真実

「仕事があるからテープを貼りたくない」という心理的負担は理解できますが、医学的な観点から見ると、保護なしでの管理はハイリスクな選択と言わざるを得ません。

炎症後色素沈着(PIH)の重症化リスク

医学的な統計において、日本人の肌質(フィッツパトリック分類III-IV)では、Qスイッチルビーレーザー後に30〜50%程度の確率でPIH(戻りジミ)が発生すると報告されています。これは、テープをしていても起こりうる生理的な反応です。

しかし、テープ保護を行わず、紫外線や物理的刺激に無防備に晒された場合、この発生リスクが最大化します。 具体的には、通常であれば3〜6ヶ月で消失する色素沈着が、「より濃く」「より深部に」定着してしまい、1年以上消えずに残る、あるいはそのままシミとして再発してしまう可能性が格段に高まります。テープ保護は、PIHを完全に防ぐ魔法ではありませんが、その重症度を下げ、早く消えるようにコントロールするための必須手段です。

治癒遅延と感染リスク

保護を行わず患部を乾燥させてしまうと、治癒に必要な細胞の移動が妨げられ、上皮化までの期間が延長します。治癒が遅れるということは、それだけ炎症期間が長引くことを意味し、結果として色素沈着のリスクを高めることにつながります。

また、バリア機能のない皮膚が外気にさらされることで、黄色ブドウ球菌などの細菌感染を起こすリスクも生じます。感染を併発した場合、組織の損傷が深くなり、最悪の場合は肥厚性瘢痕(ケロイド状の跡)を残す可能性もあります。

推奨される保護期間の目安

皮膚の再生プロセスに基づいた、理想的な保護期間とケア内容は以下の通りです。個人の治癒能力や照射出力により多少前後しますが、基本的には「かさぶたが自然に取れるまで」が必須期間となります。

期間(目安) 皮膚の状態 推奨されるケア方法
施術直後~10日 生傷の状態・滲出液あり 軟膏 + 被覆材による厳格な保護(必須)湿潤環境を維持し、上皮化を促進させる最重要期間。
10日~14日 かさぶた形成・脱落期 テープ保護の継続かさぶたが自然に剥がれ落ちるまで保護を続ける。無理に剥がすのは厳禁。
かさぶた脱落後 薄いピンク色の新生皮膚 UVケア + 美白剤透明フィルムの使用が可能になる。摩擦を避け、徹底した遮光を行う。

まずは、ご自身のスケジュール帳を確認し、施術当日から最低10日間は「テープ保護を最優先できる日程」を確保できるか検討することから始めましょう。(参考:日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会『美容医療診療指針(令和3年度改訂版)』2022年)

 

【第1段階:施術直後~10日】必須保護期間を乗り切る工夫

施術直後から約10日間は、滲出液(傷口からの体液)や血液が滲む可能性があり、医学的見地からテープによる保護が「絶対必須」となる期間です。この期間に保護を怠ると、治療の失敗に直結します。

しかし、ビジネスパーソンにとって「顔にテープを貼ったまま出勤すること」は容易ではありません。ここでは、医学的な保護機能を損なわず、可能な限り社会生活における視覚的ストレスを軽減するための、専門的な資材選びとカモフラージュ技術について解説します。

~この章のポイント~
・市販のキズパワーパッドは顔には厚すぎて目立つため不向き
・医療用の「薄型ハイドロコロイド」なら目立ちにくい
・マスクや髪型、週末を活用したスケジュール調整が鍵

目立ちにくいテープの選択肢と特性

従来の「茶色の紙テープ(サージカルテープ)」は安価で入手しやすい反面、肌の質感と明らかに異なるため、対面距離ではどうしても違和感を与えてしまいます。現在は、機能性と審美性を両立させた「医療用被覆材」がいくつか存在します。自身の許容度とコストに合わせて適切なものを選択することが推奨されます。

保護テープの種類と比較

各資材の特性を理解し、医師に希望を伝える際の参考にしてください。

種類 代表的な商品例 厚さ・見た目 推奨度
薄型ハイドロコロイド デュオアクティブET 極薄・半透明・目立ちにくい ★★★★★
厚手ハイドロコロイド キズパワーパッド等 厚い・膨らむ・非常に目立つ ★★☆☆☆
茶色テープ マイクロポア等 肌色だが質感でバレる ★★★☆☆
透明フィルム エアウォールUV この時期は使用禁止 ☆☆☆☆☆

デュオアクティブETの優位性

多くの美容皮膚科クリニックで「オプション」または「標準」として採用されているのが、コンバテック社の「デュオアクティブET」に代表される薄型ハイドロコロイド材です。

この資材の最大の特徴は、市販のハイドロコロイド製品よりも格段に薄く、皮膚への密着性が高い点です。貼付直後は肌の色が透けて見え、滲出液を吸収するとその部分だけが白くゲル化します。一見すると「小さなニキビパッチ」のように見えるため、茶色のテープと比較して清潔感があり、ビジネスシーンでも悪目立ちしにくい利点があります。

社会生活と両立させる実践テクニック

適切な資材を選んだとしても、完全に「見えない」状態を作ることは不可能です。物理的なカモフラージュと、周囲へのコミュニケーション戦略を組み合わせることで、精神的な負担を軽減することが可能です。

職場でのカモフラージュ術

物理的な対策として有効なのは、マスクと眼鏡の併用です。ただし、一般的な不織布マスクをそのまま着用することは避けるべきです。不織布の繊維がテープの端に引っかかり、剥がれの原因となるほか、摩擦によって患部に微細な炎症を引き起こす可能性があります。

  • マスクの二重活用
    不織布マスクの下に、患部に当たらないようガーゼを挟むか、口元の空間が広い「立体型マスク(くちばし型)」を使用し、物理的接触を極限まで減らす工夫が必要です。
  • コミュニケーションの工夫
    テープについて他者から指摘される前に、先手を打って説明することも有効です。「美容医療」という言葉に抵抗がある場合は、「皮膚科でホクロを取りました」や「イボの治療で薬を塗っています」と伝えると、医療行為であることが伝わり、それ以上深く追求されることを防げます。

スケジューリングの妙

施術日を戦略的に設定することで、ダウンタイムのピークをコントロール可能です。 最も滲出液が多く、テープが白く膨らんで目立ちやすいのは「施術当日から3日間」です。

推奨されるのは「木曜の夜」または「金曜」の施術です。最もケアが必要で目立つ最初の2〜3日を土日に当てることで、自宅で徹底した保護管理が可能となります。週明けの月曜日には滲出液が減少し、テープの膨らみも落ち着いているケースが多く、出勤時の心理的ハードルを下げることができます。

この期間の絶対NG行動

治癒過程にあるこの期間に、良かれと思って行った行動が裏目に出ることがあります。以下の2点は、色素沈着や傷跡のリスクを最大化させるため、厳に慎んでください。

かさぶたを人為的に剥がす

テープ交換の際や、洗顔時に、ふやけたかさぶたを意図的に剥がしてしまう行為は禁忌です。無理に剥がされた皮膚の下では、未熟な表皮が露出し、強い炎症反応が引き起こされます。これが、後に消えない「茶色いシミ(重度の色素沈着)」の原因となります。かさぶたは、下の皮膚が出来上がれば自然に脱落します。

エアウォールUVの早期使用(絶対禁止)

第3章で解説する透明フィルム「エアウォールUV」は、非常に有用なツールですが、メーカー仕様として未滅菌であり、傷口(創部)への直接貼付は禁止されています。

滲出液が出ている時期に使用すると、感染症の原因になるだけでなく、粘着力が強いため、剥がす際に形成途中のデリケートなかさぶたや新生皮膚ごと持っていってしまうリスクがあります。透明にしたい焦りから早期に使用開始することは、結果として治癒を遅らせる原因となります。

まずは、クリニックのカウンセリング時に「デュオアクティブETなどの薄いテープの取り扱いはありますか?」と確認し、ない場合は処方可能か、あるいは持ち込みが可能かを確認してみましょう。

(参考:Tanfoline “Postoperative risk assessment of post-inflammatory hyperpigmentation” Journal of Dermatological Treatment, 2024 ※アジア人でのQSNYLによるPIH発生率20-50%と報告)

 

【第2段階:かさぶた脱落後~】透明保護(エアウォールUV)の活用

かさぶたが自然に脱落し、その下から新しい皮膚(新生上皮)が現れた段階で、ようやく目立つテープや軟膏処置から卒業できます。しかし、生まれたての皮膚は非常に薄くデリケートであり、わずかな紫外線曝露でも容易に色素沈着を起こします。

この時期に、日焼け止めクリーム単体ではなく、医療用の極薄透明フィルムを活用することで、見た目の自然さを保ちながら、物理的に紫外線を97%以上カットし続けることが可能です。これは仕事や対人関係を重視する方にとって、最強のソリューションとなります。

~この章のポイント~
・かさぶたが取れた直後から透明フィルムの使用が可能になる
・エアウォールUVは97%のUVカット率でメイクの上からも貼れる
・剥がすときは慎重に行わないと皮膚を傷めるので注意が必要

エアウォールUVへの切り替えタイミング

透明フィルムへの切り替えには、明確な医学的基準があります。焦りは禁物です。

使用を開始するための絶対条件は、かさぶたが完全に脱落し、乾いたピンク色の皮膚になっていることです。 わずかでも滲出液(ジュクジュクした液)が出ていたり、かさぶたの一部が残っている状態で使用してはいけません。

浸出液がある状態で密閉性の高いフィルムを貼ると、内部で細菌が繁殖する温床となり、感染症を引き起こすリスクがあります。必ず患部がドライな状態であることを確認してから使用を開始してください。

エアウォールUVの特徴とメリット

現在、美容医療のアフターケアで広く推奨されているのが、株式会社共和のskinix(スキニックス)である「エアウォールUV」です。この製品が従来のドレッシング材と一線を画すのは、以下のスペックによるものです。

製品スペックと特性

圧倒的な薄さ: 厚さ0.007mm(7ミクロン)。これは卵の薄皮よりも薄く、貼っていることを忘れるほどの「ゼロ感覚」を実現しています。

  • 高いUVカット率:透明でありながら、UV-B波およびUV-A波を約97%カットします。
  • テカリのなさ:表面に特殊なノングレア加工が施されており、光を反射しないため、素肌と同化して見えます。

日焼け止めに対する優位性

日焼け止めクリーム(サンスクリーン剤)は、汗や皮脂、マスクの摩擦によって時間の経過とともに必ず効果が減弱します。対してフィルムは、物理的に剥がれない限り、朝から晩まで一定の遮光効果を持続させることができます。「塗り直しの手間」と「塗りムラによるリスク」を同時に解消できる点が、医学的にも推奨される理由です。

失敗しない貼り方とメイクの手順

0.007mmという極薄フィルムを扱うには、多少のコツが必要です。失敗してシワになると逆に目立ってしまうため、正しい手順を習得することが重要です。

剥がれにくくする下準備

角の処理: フィルムの四隅をハサミで小さく丸くカットします。角(カド)を無くすことで、衣服やマスクへの引っかかりが劇的に減少し、剥がれにくくなります。貼る箇所の皮膚に水分や油分が残っていると、密着力が低下します。化粧水や乳液が馴染んだ後、ティッシュや綿棒で軽く患部を押さえ、油分をオフしてから貼付します。

メイクとの併用テクニック

エアウォールUVは、フィルムの上からメイクをすることが可能です。 フィルムを貼った後、その上からファンデーションやコンシーラーを重ねることで、境界線をぼかし、新生皮膚の赤みをカバーできます。リキッドタイプよりもパウダータイプの方が、フィルムの段差を目立たなくさせる効果が高く、より自然な仕上がりとなります。

使用上の注意と剥がし方

使用において最も注意すべきは「剥がす時」です。粘着力自体は肌に優しい設計ですが、フィルムが極薄であるため、雑に剥がすと皮膚の角質層を傷つける恐れがあります。

  • セロハンテープ法:フィルムの端にセロハンテープを貼り、水平方向にゆっくりと引き伸ばすようにして浮かせます。
  • オイル法:クレンジングオイルをフィルムの端に馴染ませ、粘着力を弱めながらゆっくりと除去します。

垂直方向に勢いよく引っ張る「絆創膏剥がし」のような動作は、せっかく再生した表皮を傷めるため絶対に避けてください。

(参考:日本皮膚科学会『創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)―1 創傷一般(第3版)』日皮会誌:133巻11号, 2519-2564, 2023)

 

【ハイリスク】どうしてもテープを貼れない場合の対処法

職場の規定が厳しい、あるいは人前に立つ重要な業務があるなど、どうしても日中にテープを貼ることが不可能なケースも存在します。 しかし、レーザー照射後の皮膚を「無防備」にすることは、高確率で色素沈着(PIH)を悪化させる行為です。

ここでは、医学的な推奨からは外れるものの、リスクを少しでも軽減するために守るべき厳格な管理ルールと、現実的な折衷案について解説します。

~この章のポイント~
・軟膏のみの管理は乾燥と摩擦のリスクが非常に高く、茨の道である
・「夜だけテープ」のハイブリッド方式でリスクを分散させる
・マスク摩擦は意外な盲点でありPIHの悪化要因となる

「軟膏のみ」管理の厳格な条件

テープを使用せず、軟膏の塗布のみで経過を見る方法を「開放療法」と呼びます。この方法を選択する場合、テープ保護を行う場合と比較して、患者自身に極めて高い管理能力と自制心が求められます。

乾燥(ドライヒーリング)との戦い

最大のリスクは、患部が乾燥してかさぶたが厚くなり、治癒が遅れることです。これを防ぐためには、常に患部が軟膏でテカテカ光っている状態を維持しなければなりません。 朝晩の塗布では全く足りません。乾燥を感じる前に、2〜3時間おきに軟膏を重ね塗りする必要があります。トイレに立つたびに鏡を見て軟膏を塗る、それくらいの頻度と執念が必要です。

物理的防御の欠如への対策

テープという「盾」がないため、紫外線や外気がダイレクトに患部を襲います。 日焼け止めクリームは傷口への刺激となるため、この段階では使用できません。したがって、つばの広い帽子、日傘、遮光カーテンなどを駆使し、物理的に紫外線を100%遮断する環境を作る必要があります。

現実的な折衷案「ハイブリッド保護」

「仕事中は軟膏のみ、それ以外はテープ」という使い分けを行う、ハイブリッドな管理方法です。24時間開放しておくよりは、治癒環境の改善が見込めます。

  • 日中(勤務中):軟膏を頻回に塗布 + マスク等での保護
  • 帰宅後・就寝中:洗顔後にハイドロコロイド等のテープを貼付

メリットとデメリットの天秤

夜間だけでも湿潤環境を作ることで、皮膚の再生を少しでも助ける狙いがあります。しかし、毎日テープを貼り替える(剥がす)という行為自体が、新生皮膚への物理的刺激となるジレンマがあります。 この方法をとる場合、テープを剥がす際は、粘着力を十分に弱めてから慎重に行うなど、細心の注意が必要です。また、使用するテープは粘着力が強すぎないもの(デュオアクティブETなど)を選ぶ視点も重要になります。

マスク摩擦という「隠れたリスク」

「テープは貼れないけれど、マスクで隠すから大丈夫」と考える方が非常に多いですが、これは危険な誤解です。

不織布は「ヤスリ」である

一般的な不織布マスクの繊維は、ミクロの視点で見れば粗く、会話や表情の変化に伴って患部を何度も往復して擦ります。これは、傷口に紙やすりをかけているのと同義です。

この摩擦により、軟膏が拭い去られて乾燥したり、形成途中の薄いかさぶたが強制的に剥がされたりします。結果として、マスクの形に沿って肝斑が悪化したり、PIHが濃く残ったりする事例が後を絶ちません。

ガーゼによる緩衝地帯の作成

マスクを使用する場合は、患部とマスクが直接触れないよう、間に「ガーゼ」を挟むことが必須です。 ガーゼを患部より一回り大きくカットし、医療用テープでマスクの内側に固定する、あるいは立体構造(3D)マスクを使用して口元に空間を確保するなど、物理的な接触を断つ工夫を徹底してください。

(参考:NCBI “Laser Fitzpatrick Skin Type Recommendations” StatPearls, 2023, PubMed “The Asian dermatologic patient: review of common pigmentary disorders” 2009)

 

Qスイッチルビーレーザー vs ピコスポット

近年、「テープ不要」を謳うピコレーザー(ピコスポット)の登場により、Qスイッチルビーレーザーを「旧世代の機器」と捉える向きもあります。しかし、皮膚科専門医の多くが、今なおQスイッチルビーレーザーを「シミ治療のゴールドスタンダード(標準治療)」として愛用し続けているのには、明確な理由があります。

「テープを貼るか、貼らないか」という利便性だけで選択するのではなく、治療のゴール(1回で取り切りたいのか、回数がかかってもダウンタイムを抑えたいのか)を見据えた機器選定が重要です。

~この章のポイント~
・「1回で取り切る」破壊力ならQスイッチ、「ダウンタイム軽減」ならピコ
・ピコスポットであってもテープ保護をした方が仕上がりは綺麗になる
・自身のライフスタイルとシミの性質に合わせて機種を選ぶことが重要

治療機器による特性の違い

Qスイッチルビーレーザーとピコスポットの最大の違いは、「パルス幅(レーザーの照射時間)」と、それによる「メラニンの破壊方法」にあります。

比較項目 Qスイッチルビー ピコスポット
作用機序 光熱作用(熱でメラニンを焼く) 光音響作用(衝撃波で粉砕する)
パルス幅 ナノ秒(10億分の1秒) ピコ秒(1兆分の1秒)
熱ダメージ 大きい(炎症が強い) 極めて少ない
1回の除去力 非常に高い(切れ味が良い) 高い(薄いシミは残ることも)
テープ保護 原則必須(7〜14日間) 不要な場合もあるが推奨される

Qスイッチルビーレーザーは「ナノ秒」というパルス幅で強力な熱を発生させ、メラニンを破壊します。対してピコスポットは、その1000分の1の「ピコ秒」で照射し、熱ではなく衝撃波(音響作用)でメラニンを微細に粉砕します。この違いが、ダウンタイムと切れ味の差を生み出します。

それでもQスイッチを選ぶ価値がある理由

「テープが必要なら、すべてピコスポットで良いのでは?」という疑問に対し、専門的な視点からQスイッチの優位性を解説します。

①「切れ味」と到達深度

Qスイッチルビーレーザーの694nmという波長は、メラニンへの吸収率が非常に高く、境界がはっきりした濃いシミ(老人性色素斑)や、真皮層にある深いシミ(ADM等)に対して、圧倒的な破壊力を持ちます。

ピコスポットでは数回かかるような濃いシミでも、Qスイッチであれば1回の照射で「パキッ」と取れるケースが多く、「ダウンタイム(テープ期間)さえ我慢すれば、トータルの通院回数は少なくて済む」という大きなメリットがあります。

②コストパフォーマンス

一般的に、最新機器であるピコレーザーよりも、Qスイッチルビーレーザーの方が施術単価が安価に設定されている傾向があります。

1回で完了する確実性と単価を考慮すると、コストパフォーマンスの面でQスイッチに軍配が上がることも少なくありません。

医師と相談して決めるべきこと

重要な事実は、ピコスポットであっても、テープ保護をした方が仕上がりは綺麗であるということです。 ピコスポットは熱ダメージが少ないため「軟膏のみでも可」とされるケースが多いですが、湿潤療法(モイストヒーリング)の原理は変わりません。より美しく、より早く治したいのであれば、機種に関わらずテープ保護は有効な手段です。

カウンセリングでの意思決定

医師に相談する際は、以下の優先順位を明確に伝えてください。

  • Aパターン(結果重視):「仕事でテープを貼る調整はなんとかつけるので、1回で確実にシミを取りたい」 → Qスイッチルビー推奨
  • Bパターン(ダウンタイム重視):「シミが少し残っても構わない、あるいは複数回通っても良いので、とにかくテープを貼る期間をゼロ、もしくは数日に抑えたい」 → ピコスポット推奨

シミの種類によっては、Qスイッチでなければ取れないものもあります。ネットの情報だけで自己判断せず、肌診断機(VISIA等)のあるクリニックで、隠れたシミの状態まで診てもらった上で決定しましょう。

 

まとめ

Qスイッチルビーレーザーにおける術後のテープ保護は、単なる処置ではなく「美しい仕上がり」を決定づける治療プロセスの一部です。約2週間という保護期間は、多忙な日常においては長く感じるかもしれません。しかし、これから数年、数十年と付き合っていく素肌の美しさを考えれば、それは一瞬の「未来への投資」と言えます。

季節は巡り、春夏の強力な紫外線や、秋冬の乾燥した外気など、肌を取り巻く環境は常に変化します。どのような季節に施術を受けたとしても、本稿で解説した通り、医学的根拠に基づいた「遮光」と「湿潤環境の維持」を徹底することで、炎症後色素沈着(PIH)のリスクは最小限に抑えられます。

透明フィルムやハイブリッドケアといった選択肢を知っていれば、仕事やライフスタイルを犠牲にすることなく、シミのない肌を目指すことは十分に可能です。

まずは、自身の勤務形態や休暇スケジュールを整理した上で、信頼できるクリニックのカウンセリングに足を運び、ライフスタイルに合致した最適な治療計画を医師と共に策定することから始めてみましょう。

アラジン美容クリニックでは、美容医療および美容皮膚における長年の経験や博士号を持つ知見より、出逢う皆様のお一人ひとりに最適な施術を提供する「オンリーワン」を目指すカウンセリングを実施し、余計な情報や提案をせず、「ウソのない」美容医療で、必要な施術のみをご提案しております。

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