鏡を見るたびに気になる頬のくすみ。ファンデーションで隠しても、ふとした瞬間に目に入る左右対称の茶色い影。「これはシミなのか、それとも肝斑なのか」など、その疑問を抱えたまま、なんとなく美白化粧品を使い続けている方は少なくないでしょう。
肝斑の厄介な点は、見た目だけでは他のシミとの区別が難しいことにあります。老人性色素斑(いわゆる日光黒子)やADM(後天性真皮メラノサイトーシス)と重なって存在するケースも多く、皮膚科医でさえ目視だけでは確定的な判断が難しい場合があります。そして、診断を誤ったまま強いレーザー治療を受けてしまうと、かえって悪化するリスクがあることも、肝斑治療の難しさを物語っています。
近年、こうした診断の曖昧さを補う手段として注目されているのが、VISIA(ビジア)による肌画像解析です。とりわけ、肌表面からは見えにくい赤み、つまり、毛細血管の拡張や微細な炎症を可視化できる点が、肝斑診断の精度向上に寄与する可能性があるとして、美容皮膚科領域で関心を集めています。
ここでは、なぜ肝斑の判断が難しいのかという基本的な問題から、VISIAがどのような仕組みで肌の状態を解析するのか、そしてその情報が治療方針の決定にどう活かされるのかまで、順を追って解説します。新しい年を迎え、肌と向き合う時間を持ちたいと考えている方にとって、ひとつの判断材料となれば幸いです。

国立熊本大学医学部を卒業。国内大手美容クリニックなどで院長を歴任し、2023年アラジン美容クリニックを開院。長年の実績とエイジングケア研究で博士号取得の美容医療のプロ。「嘘のない美容医療の実現へ」をモットーに、患者様とともに「オンリーワン」を目指す。
なぜ肝斑の判断は難しいのか?医師の目視診断の限界
肝斑は、30代以降の女性に多く見られる色素沈着症のひとつです。両頬に左右対称に現れる茶褐色の色素斑が特徴とされていますが、実際の臨床現場では「これは肝斑である」と即座に断定できるケースばかりではありません。
なぜなら、肝斑は他のシミと混在していることが多く、さらに肌の表面からは見えない「炎症」という要素が病態に関与している可能性があるためです。ここでは、肝斑の診断がなぜ難しいのか、その理由を2つの観点から整理します。
~この章のポイント~
・肝斑は他のシミと重なって存在することが多い
・目視では微細な炎症や血管変化を捉えにくい
・診断の曖昧さが治療の失敗につながる場合がある
表面の色だけでは判別しにくい「混合型」の存在
シミの相談で美容皮膚科を訪れる方の多くは、「このシミを取りたい」という明確な目的を持っています。しかし、医師が実際に肌を診察すると、単一のシミだけが存在するケースは意外と少ないものです。
肝斑、老人性色素斑(日光黒子)、ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)、そばかすなど、複数の色素性病変が同じ顔の上に重なり合って存在していることが珍しくありません。
こうした「混合型」の状態では、肉眼で見ただけでは各色素斑の境界線が曖昧になりがちです。たとえば、頬全体がなんとなくくすんで見える場合、それが肝斑単独によるものなのか、肝斑の上に老人性色素斑が重なっているのか、あるいはADMが併存しているのかを、目視だけで正確に切り分けることは容易ではありません。
この診断の曖昧さは、治療方針に直接影響を及ぼします。老人性色素斑であればQスイッチレーザーやピコレーザーによるスポット照射が有効ですが、同じ治療を肝斑に行うと、かえって色素沈着が悪化するリスクがあることが知られています。「たぶん肝斑でしょう」という不確定な状態のまま治療を進めてしまうと、期待した効果が得られないばかりか、症状を悪化させてしまう可能性があるのです。
| 色素斑の種類 | 典型的な特徴 | 好発部位 | 境界の明瞭さ |
|---|---|---|---|
| 肝斑 | 左右対称、刷毛で塗ったような形状 | 両頬、額、口周り | 不明瞭 |
| 老人性色素斑 | 円形〜楕円形、均一な茶色 | 顔全体、手の甲 | 明瞭 |
| ADM | 灰褐色〜青褐色の点状〜斑状 | 頬骨周辺、こめかみ | やや明瞭 |
| そばかす | 小さな点状、散在性 | 鼻〜両頬 | 明瞭 |
上記の表は各色素斑の典型的な特徴を示したものですが、実際の肌ではこれらが複合的に存在し、典型例から外れるケースも少なくありません。だからこそ、目視だけに頼らない客観的な評価手段が求められているのです。
目視では捉えきれない炎症の存在
肝斑の診断をさらに複雑にしているのが、肌の表面からは見えにくい「炎症」の存在です。
従来、肝斑は単純にメラニン色素が過剰に蓄積した状態として捉えられてきました。しかし近年の研究では、肝斑の病変部には単なる色素沈着だけでなく、真皮レベルでの血管変化や微細な炎症が伴っている可能性が指摘されています。
2007年に発表されたKimらの研究(韓国人女性50名を対象)では、肝斑病変部において血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の発現が有意に増加しており、血管の密度とサイズが非病変部と比較して増加していることが報告されました。
(※出典:Kim EH, Kim YC, Lee ES, Kang HY. “The vascular characteristics of melasma.” J Dermatol Sci. 2007;46(2):111-116.)
この研究結果が示唆しているのは、肝斑が単なる「茶色いシミ」ではなく、血管系の変化を伴う複合的な病態である可能性です。肌の表面に見える茶色い色素の下に、実は赤み(血管拡張や炎症)が隠れている場合があり、この赤みの存在が治療への反応性に影響を与えているのではないかと考えられています。
問題は、こうした微細な炎症や血管変化は、通常の目視診察では捉えにくいという点です。肌の表面に現れる赤みがごくわずかであったり、茶色い色素沈着に覆い隠されていたりすると、医師の肉眼では見落とされてしまうことがあります。その結果、炎症の存在を考慮せずに治療を開始してしまい、思うような効果が得られないケースが生じ得るのです。
こうした背景から、目視診察を補完する客観的な画像解析ツールへの期待が高まっています。肌の色素成分と血管成分(赤み)を分離して可視化できれば、肝斑の病態をより多角的に評価でき、治療方針の精度向上につながる可能性があるためです。次章では、その具体的な手段としてVISIA肌診断の仕組みを詳しく見ていきます。
VISIA肌診断の解析ロジック|肝斑はどう可視化されるか
前章では、肝斑の診断が難しい理由として「混合型」の存在と「目視では見えない炎症」の2点を挙げました。では、こうした課題に対して、画像解析技術はどのようなアプローチで貢献できるのでしょうか。
本章では、美容皮膚科領域で広く導入されているVISIA(ビジア)肌診断システムの仕組みを解説します。特に、肝斑診断において注目されているUV撮影モードとRBX技術について、その原理と臨床的な意義を整理していきます。
~この章のポイント~
・VISIAは米国Canfield Scientific社開発の肌画像解析システム
・UV撮影で隠れジミや深層メラニンを可視化できる
・RBX技術でメラニン(茶色)と血管成分(赤み)を分離表示
そもそもVISIAとは?
VISIA(ビジア)は、米国Canfield Scientific社が開発した肌画像解析システムです。世界中の医療機関、研究機関、美容クリニックで導入されており、日本国内でも多くの美容皮膚科で使用されています。
VISIAの特徴は、単なる写真撮影ではなく、複数の照明モードを用いて肌の状態を多角的に解析できる点にあります。通常のカラー撮影に加え、紫外線(UV)撮影、偏光撮影などを組み合わせることで、肉眼では確認しにくい肌の深層情報を可視化することが可能です。
撮影は正面、左側面、右側面の3方向から行われ、3次元ポジションマッチング機能により、毎回同じ角度・同じ照明条件で撮影できる仕組みになっています。この再現性の高さが、治療前後の経時的な比較を可能にしている要因のひとつです。撮影自体に痛みや負担はなく、所要時間は5〜10分程度で完了します。
なお、VISIAは診断を「確定」するための機器ではなく、医師の視診・問診を「補助」するためのツールであることを理解しておく必要があります。最終的な診断と治療方針の決定は、VISIAの画像データと医師の臨床判断を総合して行われるものです。
UV撮影モードが映し出す「メラニンの深さと広がり」
VISIAの解析機能のうち、肝斑評価において特に有用とされるのがUV(紫外線)撮影モードです。通常のカラー撮影では、肌の表面に現れている色素沈着、つまり今見えているシミを記録することができます。一方、UV撮影モードでは、紫外線を照射した際のメラニンの吸収特性を利用して、肌の表面には現れていない「隠れジミ」や、表皮より深い層に存在するメラニンの分布を可視化することが可能です。
肝斑の特徴として、以下のようなパターンがUV画像上で観察されることがあります。
- 広範囲にぼんやりと広がる色素分布
- 左右対称性のある分布パターン
- 境界が不明瞭で、周囲との区別がつきにくい形状
これらの特徴は、境界が明瞭で円形〜楕円形を呈することが多い老人性色素斑とは対照的です。UV撮影によって得られた画像は、医師が肝斑と他のシミを鑑別する際の参考情報となります。
また、UV撮影では将来的に表面化する可能性のあるメラニン沈着(いわゆる「隠れジミ」)も確認できるため、現在の治療計画だけでなく、長期的な予防戦略を検討する際にも活用されています。
RBX技術による「赤み(毛細血管)」の解析
VISIAの解析機能の中で、肝斑診断において特に注目されているのがRBX技術です。RBXとは「Red/Brown/X」の略称で、Canfield Scientific社が独自に開発したカラースペース(色空間)変換技術を指します。
人間の肌の色は、主にメラニン(褐色の色素)とヘモグロビン(血液中の赤い色素)という2つの成分によって構成されています。通常の写真では、これらが混ざり合った状態で記録されるため、「茶色いシミに見える部分」が純粋にメラニンによるものなのか、それとも血管拡張による赤みが重なっているのかを判別することは困難です。
RBX技術は、偏光撮影で得られた画像データを独自のアルゴリズムで処理し、メラニン由来の色素成分(Brown成分)とヘモグロビン由来の血管成分(Red成分)を分離して表示します。これにより、以下のような情報を視覚的に確認できるようになります。
Brown成分(メラニン分布)の解析
- 色素沈着の範囲と濃度
- 表層と深層のメラニン分布の違い
- 肝斑特有の広がりパターン
Red成分(ヘモグロビン分布)の解析
- 毛細血管拡張の有無と範囲
- 炎症を示唆する赤みの分布
- 色素沈着に重なっている血管成分の可視化
前章で触れたように、肝斑の病変部では血管密度やVEGF発現の増加が報告されています。RBX技術によってRed成分を分離表示することで、一見すると単純な茶色いシミに見える部分に、実は血管拡張や炎症性の赤みが重なっているかどうかを確認できる可能性があります。
この情報は、治療方針を検討する上で参考となり得ます。たとえば、Red成分が顕著に検出された場合、医師は炎症性の要素を伴う肝斑である可能性を考慮し、いきなり強いレーザー治療を行うのではなく、まずは内服薬や外用薬で肌の状態を整えることを優先するといった判断を検討するかもしれません。
※RBX技術による解析結果は、あくまでも診断の補助情報です。「赤みが検出された=必ず炎症がある」と断定できるものではなく、最終的な評価は医師の総合的な判断に委ねられます。
VISIAの主な解析モードと確認できる情報
VISIAでは、RBX技術以外にも複数の解析モードが搭載されています。以下の表は、主な解析モードと、それぞれで確認できる情報、および肝斑診断における参考としての位置づけをまとめたものです。
| 解析モード | 確認できる主な情報 | 肝斑診断における参考情報 |
|---|---|---|
| Spots(シミ) | 肌表面の色素沈着、そばかす | シミの輪郭、濃淡、分布範囲の確認 |
| UV Spots(隠れジミ) | 潜在的なメラニン沈着、紫外線ダメージ | 将来の広がり予測、深層メラニンの把握 |
| RBX Brown | メラニン由来の色素分布 | 肝斑特有の広がりパターンの観察 |
| RBX Red | ヘモグロビン由来の血管成分、炎症 | 炎症性要素の有無の参考情報 |
| Porphyrins(ポルフィリン) | ニキビ菌(アクネ菌)の代謝物 | ニキビとの合併状況の評価 |
| Wrinkles(シワ) | 肌表面の線状の凹み | 光老化の程度の参考(直接的関連は薄い) |
| Texture(キメ) | 肌表面の滑らかさ、均一性 | 全体的な肌コンディションの把握 |
| Pores(毛穴) | 毛穴の数、サイズ、分布 | 併存する肌悩みの評価 |
(※データ参照:Canfield Scientific社 VISIA Complexion Analysis System 製品情報)
これらの解析モードを組み合わせることで、肝斑単独の評価だけでなく、他のシミや肌トラブルとの併存状況を包括的に把握することができます。「肝斑だと思っていたものが、実はADMや老人性色素斑との混合だった」というケースを見極める上でも、複数モードによる多角的な解析は有用な参考情報となり得ます。
治療の失敗を防ぐために|VISIAデータをどう活かすか
前章では、VISIAがどのような仕組みで肌の状態を解析するのかを解説しました。UV撮影による隠れジミの可視化、RBX技術によるメラニンと血管成分の分離表示——これらの情報は、具体的にどのように治療に活かされるのでしょうか。
本章では、VISIAの解析データが治療計画の立案と経過観察にどう貢献し得るのかを、実際の臨床場面を想定しながら整理していきます。肝斑治療において「失敗」が起こりやすいポイントを理解することで、より納得感のある治療選択につなげていただければと思います。
~この章のポイント~
・赤みの有無が治療アプローチの選択に影響し得る
・段階的な治療計画で悪化リスクを軽減できる可能性
・経時的な画像比較で微細な変化を客観的に追跡
より慎重な治療計画の立案
肝斑治療における「失敗」とは何でしょうか。多くの場合、それは「治療したのに改善しなかった」あるいは「治療によってかえって悪化した」という結果を指します。特に後者レーザー治療後に色素沈着が濃くなってしまうケースは、肝斑治療において最も避けたい事態のひとつです。
こうした失敗が起こる背景には、肝斑の病態を十分に把握しないまま治療を開始してしまうことが一因として考えられます。第1章で触れたように、肝斑には単なるメラニン沈着だけでなく、炎症や血管拡張といった要素が関与している可能性があります。炎症が活発な状態でいきなり強いレーザーを照射すると、その刺激がメラノサイト(メラニンを産生する細胞)を活性化させ、結果的に色素沈着を悪化させてしまうリスクがあるのです。
VISIAのRBX解析でRed成分(血管・炎症を示唆する赤み)が顕著に検出された場合、医師はこの情報を参考に、治療の進め方を慎重に検討することがあります。具体的には、以下のような段階的アプローチが選択肢として挙げられます。
第1段階:肌の鎮静化
炎症性の要素が示唆される場合、まずは肌の状態を落ち着かせることを優先するケースがあります。この段階で用いられることが多いのが、トラネキサム酸の内服です。トラネキサム酸には抗炎症作用があり、血管内皮細胞への作用を通じてメラニン産生を抑制する効果が期待されています。ビタミンCやビタミンEの内服を併用することも一般的です。
外用薬としては、ハイドロキノン(メラニン産生を抑制する美白剤)やトレチノイン(肌のターンオーバーを促進する)が処方されることがあります。また、イオン導入やエレクトロポレーションといった導入治療により、有効成分を肌の深部に届けるアプローチも選択肢のひとつです。
第2段階:色素へのアプローチ
内服薬や外用薬で肌の状態が安定してきたことを確認した上で、レーザー治療を検討する場合があります。肝斑に対するレーザー治療としては、低出力で繰り返し照射を行う「レーザートーニング」が知られています。従来のQスイッチレーザーによる高出力照射とは異なり、メラノサイトを過度に刺激しない程度のエネルギーでメラニンに働きかけることを目的とした手法です。
ただし、レーザートーニングについても、すべての肝斑に有効というわけではなく、効果には個人差があります。また、繰り返しの照射によって白抜け(脱色素斑)が生じるリスクも報告されているため、医師との十分な相談の上で治療を進めることが推奨されます。
第3段階:維持療法と再発予防
肝斑は、一度改善しても再発しやすい性質を持っています。治療によって色素沈着が薄くなった後も、紫外線対策や適切なスキンケアを継続すること、必要に応じて内服薬を続けることが、良好な状態を維持する上で欠かせません。
| 治療段階 | 主な目的 | 代表的なアプローチ | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 炎症の鎮静、肌の安定化 | トラネキサム酸内服、外用薬、導入治療 | 1〜3ヶ月程度 |
| 第2段階 | メラニンへのアプローチ | レーザートーニング、ピコトーニング | 数ヶ月〜(複数回照射) |
| 第3段階 | 維持と再発予防 | 紫外線対策、スキンケア、内服継続 | 継続的 |
(※上記は一般的な考え方を示したものであり、実際の治療計画は個々の肌の状態や医師の判断によって異なります)
VISIAによる解析データは、こうした段階的アプローチのどこからスタートすべきかを検討する際の参考情報となります。「赤みが強いからまずは鎮静化を優先しよう」「メラニンの分布が深層に及んでいるから長期的な計画が必要だ」といった判断を、画像という客観的な根拠に基づいて行えることが、VISIAを活用するメリットのひとつといえるでしょう。
治療経過を「数値」と「画像」で追跡
肝斑治療は、1回の施術で劇的な効果が得られるものではありません。内服薬であれば数ヶ月単位、レーザートーニングであれば5回、10回と回数を重ねる中で、徐々に変化が現れてくるのが一般的です。
この「徐々に」という変化が、実は治療継続のモチベーションを維持する上での難しさにもなります。毎日鏡を見ていると、少しずつの改善には気づきにくいものです。「本当に効いているのだろうか」「このまま続けて意味があるのだろうか」——そうした不安を感じて治療を中断してしまう方も少なくありません。
VISIAの3次元ポジションマッチング機能は、こうした課題に対するひとつの解決策を提供します。この機能により、毎回の撮影を同一の照明条件・同一の角度で行うことが可能になります。撮影位置や光の当たり方が異なると、同じ肌状態でも写真上の見え方が変わってしまい、正確な比較ができません。VISIAでは、過去の撮影データと位置を合わせるためのガイド機能があり、再現性の高い撮影が実現されています。
経時的な比較によって得られるメリットは、以下のような点が挙げられます。
肉眼では気づきにくい変化の確認
色素沈着が10%薄くなった、赤みの範囲が縮小した——こうした微細な変化は、日常的に鏡を見ているだけでは認識しにくいものです。同一条件で撮影された画像を並べて比較することで、「確かに変わってきている」という実感を得やすくなります。
炎症の改善度合いの可視化
RBX解析のRed成分を経時的に比較することで、赤みがどの程度減少しているかを視覚的に確認できます。メラニン(茶色)の減少よりも、炎症(赤み)の改善が先行して現れるケースもあり、こうした変化を捉えることで「治療が正しい方向に進んでいる」という判断材料になり得ます。
治療効果の客観的な評価
「なんとなく良くなった気がする」という主観的な印象だけでなく、画像データという客観的な記録が残ることで、治療の効果をより正確に評価できます。これは、今後の治療方針を医師と相談する際にも有用な情報となります。
治療継続のモチベーション維持
数ヶ月にわたる治療を続けるには、モチベーションの維持が欠かせません。定期的にVISIA撮影を行い、「ここが改善している」「この部分はもう少し時間がかかりそう」といったフィードバックを得ることで、ゴールに向かって進んでいる実感を持ちながら治療を継続しやすくなります。
同年代比較で知る「肌の客観的評価」
前章までで、VISIAが肌の色素成分や血管成分を可視化し、治療計画や経過観察に活用できることを解説してきました。しかし、VISIAの機能はそれだけにとどまりません。
本章では、VISIAのもうひとつの特徴である「同年代比較機能」について取り上げます。自分の肌状態が、同じ年齢層の中でどの程度の位置にあるのかを客観的に把握できるこの機能は、治療の必要性を冷静に判断する上でも、治療後の成果を実感する上でも、有用な指標となり得ます。
~この章のポイント~
・蓄積された大規模データベースとの比較が可能
・パーセンタイルスコアで同年代内の相対的位置がわかる
・主観を排した冷静な判断材料として活用できる
パーセンタイルスコア(同年代平均との比較)
VISIAには、世界中のユーザーから収集された肌データを蓄積したデータベースが搭載されています。日本国内の複数のクリニックで公開されている情報によれば、このデータベースには約10万人以上の測定結果が含まれており、そのうち日本人のデータは約1万人以上とされています。(※データベースの規模は随時更新される可能性があります。最新の情報はCanfield Scientific社または各クリニックにご確認ください)
このデータベースを活用した機能が「パーセンタイルスコア」です。パーセンタイルとは、ある集団の中で自分がどの位置にいるかを示す統計的な指標で、たとえば「上位30%」であれば、同じ条件の100人中30番目以内に入る状態を意味します。
VISIAでは、解析項目ごとに、同年代・同じ肌タイプの集団と比較したパーセンタイルスコアが算出されます。たとえば、シミ(Spots)の項目で「パーセンタイル75%」という結果が出た場合、それは同年代の中でシミが少ない方から数えて上位25%に入る状態、言い換えれば「同年代平均よりもシミが少ない」ことを示しています。
この同年代比較機能は、肝斑の評価においても参考情報として活用できます。
「気にしすぎ」なのか「治療が必要」なのかの判断材料
シミや肝斑に悩んでいる方の中には、客観的に見れば同年代平均と同程度、あるいはそれ以上に良好な状態であるにもかかわらず、過度に気にしてしまっているケースがあります。毎日鏡を見ていると、自分の肌の欠点ばかりが目につきやすくなるものです。
パーセンタイルスコアは、こうした主観的な認識を客観的なデータで補正する役割を果たします。「同年代の中では上位に入っている」という結果が出れば、「今すぐ積極的な治療が必要というわけではない」という判断材料になり得ます。逆に、自分ではそこまで気にしていなかったものの、同年代平均と比較して色素沈着が進んでいることが判明した場合には、早めの対策を検討するきっかけになるかもしれません。
治療効果の相対的な評価
治療前後でパーセンタイルスコアがどう変化したかを確認することで、単に「薄くなった」という主観的な印象だけでなく、「同年代集団の中での位置がどれだけ改善したか」という相対的な評価が可能になります。たとえば、治療前は「下位40%」だったシミのスコアが、治療後に「上位30%」に改善していれば、治療の成果を数値として実感できます。
長期的な肌管理の指標
パーセンタイルスコアは、単発の評価だけでなく、長期的な肌管理の指標としても活用できます。年齢を重ねるにつれて肌の状態は変化していきますが、同年代比較を定期的に行うことで、「年齢相応の変化なのか」「それとも同年代よりも急速に進行しているのか」を把握することができます。
| パーセンタイルの範囲 | 同年代内での位置づけ | 解釈の目安 |
|---|---|---|
| 80〜100% | 上位20%以内 | 同年代平均より良好な状態 |
| 60〜79% | 上位21〜40% | 同年代平均よりやや良好 |
| 40〜59% | 中央付近 | 同年代平均と同程度 |
| 20〜39% | 下位21〜40% | 同年代平均よりやや進行 |
| 0〜19% | 下位20%以内 | 同年代平均より進行している状態 |
※上記は一般的な解釈の目安であり、数値だけで治療の要否が決まるわけではありません。肌の状態は個人差が大きく、パーセンタイルスコアはあくまでも参考情報のひとつです。
数値に振り回されないために
パーセンタイルスコアは客観的な指標として有用ですが、この数値だけに一喜一憂することは避けたいものです。
肌の悩みは、客観的なデータと主観的な感覚が必ずしも一致しません。同年代平均より良好なスコアであっても、本人にとっては大きな悩みであることもあります。逆に、スコアが低くても、本人がそれほど気にしていなければ、無理に治療を勧める必要はないでしょう。
VISIAのパーセンタイルスコアは、「治療すべきかどうか」を機械的に判定するためのものではありません。むしろ、医師との相談において「私の肌は客観的に見てどういう状態なのか」を共有し、その上で「自分はどうしたいのか」を考えるための材料として活用するのが適切な使い方といえます。
また、データベースの構成(年齢層、肌タイプ、地域など)によって、比較対象となる集団の特性が異なる点にも留意が必要です。日本人のデータが約1万人以上含まれているとはいえ、自分と完全に同じ条件の集団と比較しているわけではないことを理解しておくとよいでしょう。
VISIA肌診断の流れとカウンセリング
ここまで、VISIAの解析技術や活用方法について詳しく解説してきました。では、実際にVISIA肌診断を受ける場合、どのような流れで進むのでしょうか。
本章では、一般的なVISIA肌診断の流れを6つのステップに分けて紹介します。初めて肌診断を受ける方にとっては、事前に流れを把握しておくことで、当日の不安を軽減し、より有意義なカウンセリングの時間を過ごせるはずです。
~この章のポイント~
・診断は6つのステップで進行(所要時間30〜60分程度)
・撮影自体に痛みや負担はない
・医師による結果説明が最も重要な工程
STEP1|カウンセリング(問診)
最初に、現在の肌の悩みや気になる症状について詳しくヒアリングが行われます。この段階で伝えておきたいのは、単に「シミが気になる」という漠然とした内容だけでなく、より具体的な情報です。
たとえば、「いつ頃から気になり始めたか」「季節や体調によって濃さが変わる感覚があるか」「過去にどのような治療やスキンケアを試したか」「現在服用している薬やサプリメントはあるか」といった情報は、医師が肌の状態を総合的に判断する上で参考になります。
肝斑は女性ホルモンとの関連が指摘されているため、妊娠・出産歴やピルの服用歴なども、差し支えない範囲で共有しておくとよいでしょう。
STEP2|洗顔
正確な解析を行うためには、肌表面のメイクや皮脂、日焼け止めなどを完全に落とす必要があります。クリニックによっては洗顔スペースが用意されており、クレンジング剤や洗顔料が提供されます。
普段のメイクが濃い方や、ウォータープルーフの日焼け止めを使用している方は、丁寧に落とすよう心がけてください。メイク残りがあると、解析結果に影響を及ぼす可能性があります。(所要時間の目安:約5分)
STEP3|撮影
洗顔後、VISIA本体での撮影に移ります。撮影時は、専用の機器に顎を固定台に乗せ、顔の位置を安定させた状態で行います。回転式のカメラモジュールが、正面・左側面・右側面の3方向から順に撮影していきます。通常のカラー撮影に加え、UV撮影、偏光撮影など複数のモードで撮影が行われ、それぞれ異なる肌情報を取得します。
撮影中は目を閉じた状態で、リラックスして待っているだけで問題ありません。フラッシュのような光が当たりますが、痛みや熱さを感じることはなく、身体への負担はほとんどありません。(所要時間の目安:約5〜10分)
STEP4|画像解析
撮影が完了すると、VISIAのシステムが自動的に画像を解析します。シミ、隠れジミ、シワ、毛穴、肌の色ムラ、赤み、ポルフィリン(ニキビ菌の代謝物)など、複数の項目について数値化・可視化が行われます。
また、前章で解説したRBX技術によるメラニン・ヘモグロビンの分離表示や、同年代比較のパーセンタイルスコアも、この段階で算出されます。解析自体は数分で完了し、結果はモニター上に表示されます。
STEP5|医師による結果説明
VISIA肌診断において、最も重要な工程がこのステップです。解析によって得られた画像や数値は、それ自体では「情報」に過ぎません。その情報をどう解釈し、どのような治療や対策につなげるかは、医師の専門的な知見があって初めて意味を持ちます。
結果説明では、医師がモニターに映し出された画像を見ながら、以下のような点について解説を行うのが一般的です。
- 色素沈着の分布パターンと、肝斑・老人性色素斑・ADMなどの鑑別の考え方
- RBX解析で検出された赤みの有無と、炎症性要素の可能性についての見解
- 隠れジミの状態から推測される、将来的な色素沈着の進行リスク
- 同年代比較(パーセンタイルスコア)の解釈と、現在の肌状態の位置づけ
- 総合的に見た治療の必要性と、優先度の高いアプローチ
この説明の場は、患者側から質問をする貴重な機会でもあります。「この部分は肝斑ですか、それとも別のシミですか」「赤みがあるということは、すぐにレーザーは避けた方がよいのでしょうか」「どのくらいの期間で改善が見込めますか」など、気になることは遠慮なく確認してみてください。
VISIAの画像という客観的なデータを目の前にしながら会話ができるため、医師と患者の間で認識のずれが生じにくく、より具体的で建設的な相談が可能になります。
STEP6|治療計画の提案
結果説明を踏まえ、一人ひとりの肌状態に合わせた治療計画が提案されます。肝斑が疑われる場合、第3章で解説したような段階的アプローチについて、まずは内服薬や外用薬で肌を整え、状態を見ながらレーザー治療を検討するが提案されることが多いでしょう。また、肝斑と他のシミが混在している場合には、それぞれに対する治療法を組み合わせた複合的なプランが示されることもあります。
提案された治療計画は、必ずしもその場で決定する必要はありません。内容を持ち帰って検討する時間を取ることも、セカンドオピニオンを求めることも、患者の権利として当然認められています。納得した上で治療を開始することが、長期にわたる肝斑治療を継続する上での基盤となります。
| ステップ | 内容 | 所要時間目安 | ポイント |
|---|---|---|---|
| STEP 1 | カウンセリング(問診) | 10〜15分 | 悩みや経緯を具体的に伝える |
| STEP 2 | 洗顔 | 約5分 | メイク・日焼け止めを完全に落とす |
| STEP 3 | 撮影 | 5〜10分 | 痛みや負担はなし |
| STEP 4 | 画像解析 | 数分 | 自動解析のため待機のみ |
| STEP 5 | 医師による結果説明 | 10〜20分 | 質問があれば積極的に確認 |
| STEP 6 | 治療計画の提案 | 5〜10分 | 即決せず検討してもOK |
※所要時間はクリニックや個々の状況によって異なります。全体で30分〜1時間程度を見込んでおくとよいでしょう。
クリニック選びで確認したいポイント
VISIA肌診断を受けるクリニックを選ぶ際には、以下のような点を確認しておくと安心です。
VISIAの機種と解析機能
VISIAにはいくつかのモデルがあり、搭載されている解析機能が異なる場合があります。特に、RBX技術による赤み解析が可能かどうかは、肝斑評価において参考となる情報を得られるかどうかに関わります。事前に問い合わせるか、クリニックのウェブサイトで確認しておくとよいでしょう。
医師による説明の有無
VISIA撮影を行っていても、結果の説明がスタッフ任せになっているケースもあります。肝斑の鑑別や治療方針の判断は医師の専門領域であるため、必ず医師から直接説明を受けられる体制かどうかを確認することをおすすめします。
経過観察の体制
肝斑治療は長期にわたることが多いため、治療開始後も定期的にVISIA撮影を行い、経過を追跡できる体制が整っているかどうかも重要なポイントです。治療前後の比較ができることで、効果の実感や治療方針の見直しがしやすくなります。
まとめ
ここまで、肝斑診断の難しさとVISIA肌診断の役割について解説してきました。肝斑は、その発生メカニズムに炎症や血管の変化が関与している可能性が指摘されており、単なる「茶色いシミ」として捉えるだけでは本質を見誤ることがあります。目視では捉えきれないこうした要素を、画像解析という客観的な手法で可視化できる点に、VISIAの価値があるといえるでしょう。
もちろん、VISIAはあくまでも診断を「補助」するツールであり、最終的な判断は医師の視診・問診と合わせて総合的に行われるものです。機械が出した数値や画像だけで治療方針が決まるわけではありません。
しかし、「なんとなく肝斑かもしれない」という曖昧な状態から、「この赤みの分布パターンを踏まえると、まずは炎症を抑える治療から始めた方がよさそうだ」という具体的な方針へと進むための材料として、VISIAの解析データは確かな意味を持ちます。
季節の変わり目や環境の変化で肌の調子が揺らぎやすい時期こそ、現状を正確に把握することが、遠回りのない治療への第一歩となります。長年抱えてきたシミの悩みが、実は肝斑だったというケースは決して珍しくありません。
自己判断で市販の美白製品を使い続ける前に、一度専門のクリニックでVISIA診断を受け、医師と一緒に肌の状態を確認してみることをおすすめします。客観的なデータに基づいた治療計画は、結果として時間とコストの両面で効率的な選択につながることが多いものです。
アラジン美容クリニックでは、美容医療および美容皮膚における長年の経験や博士号を持つ知見より、出逢う皆様のお一人ひとりに最適な施術を提供する「オンリーワン」を目指すカウンセリングを実施し、余計な情報や提案をせず、「ウソのない」美容医療で、必要な施術のみをご提案しております。
LINE公式アカウントにて、お気軽に24時間カウンセリングや予約を受付しております。無料カウンセリングで初めての方やお悩みの方はぜひ一度ご相談くださいませ。


