脂肪吸引で血管はボロボロになるって本当?残る血管と本当のリスク

美容医療

脂肪吸引で血管がボロボロになるということについて、施術中に細い血管が一時的に傷つき、その内出血が皮膚を通して広い範囲に見えている状態を指す通俗的な表現であり、血管が恒久的に壊れることを意味する医学用語ではありません。

皮下組織を器具が通過する以上、細い血管への一時的な負担は避けられませんが、吸引後の組織にも微小血管が保たれていたことが対照研究で確認されています。本当に警戒すべきは漠然とした不安ではなく、頻度は低くとも重大な血管系の合併症であり、その実態を数値で把握することが判断の土台になります。

本記事は医師監修のもと、噂の発生源となった内出血の仕組みから、静脈血栓塞栓症や脂肪塞栓症といった実際の合併症の頻度、出血を抑える麻酔と血管に関わる禁忌、そして術後に自分で確認すべきサインまでを整理しています。

 

「血管がボロボロ」の正体は毛細血管の一時的な損傷

「血管がボロボロになる」という言葉は、医学的には毛細血管の一時的な損傷とその内出血を指しています。皮下脂肪の層を器具が通過する以上、細い血管が傷つくこと自体は避けられない生理的な現象であり、それが皮膚に透けて見えたものが不安を招く表現として広まっています。

この章では、恐怖の対象を具体的な医学的事象に翻訳し、必発の現象と合併症として数えられる事象の境界を示します。

この章のポイント
・血管損傷は一時的で避けられない現象
・吸引後も微小血管は保たれている
・内出血と血腫は別の事象として区別

カニューレが通るのは皮下脂肪の層

脂肪吸引でカニューレが通過するのは、脂肪細胞とともに細い血管・リンパ管・神経が分布する皮下脂肪の層です。この層は体を養う太い血管が走る層より浅く、施術の対象となる範囲と、生命維持に関わる太い血管が走る層は基本的に異なります。

カニューレは陰圧をかけながら脂肪組織を吸引する器具であり、この層を通過する際に細い血管が傷つくこと自体は、避けられない現象として想定されています。一方で、皮下脂肪より深い層を走る太い血管は吸引の対象にならないため、施術の構造上、そこが直接の標的になることはありません。

太い血管が別の層にあるという解剖の前提を知っておくと、「血管がすべて傷つく」という漠然とした不安を、皮下の毛細血管に限定した理解に置き換えやすくなります。

吸引後も微小血管網は保たれる

吸引後に残った組織を調べた研究では、血管の構造がおおむね保たれていることが確認されています。腹壁形成術の際に同一患者から採取した組織を、一塊で切除した組織・吸引された脂肪組織・吸引後に残った組織の3群で比較した対照研究では、共焦点顕微鏡による血管内皮マーカー(CD31)陽性の血管の割合が、吸引後に残った組織で8.9%程度、一塊で切除した組織で8.2%程度となり、両者に統計的な有意差はみられませんでした。

吸引された脂肪組織そのものでは同じマーカーが1.6%程度まで下がっており、吸引によって主に持ち出されるのは脂肪細胞であり、血管の構造は組織側に残っていたことを示す結果と整理できます。

ただしこの研究は5名という小規模な対象で、部位も腹部に限られ、組織を顕微鏡で調べた指標であり、臨床的な血流や長期の経過を直接測定したものではありません。「血管がまったく傷つかない」という意味ではなく、吸引後の組織にも血管が残っていたことが確認されている、という水準で理解しておくとよいでしょう。

組織 血管の割合 脂肪細胞の割合
切除した組織 8.2% 39.5%
吸引された組織 1.6% 45%
吸引後に残った組織 8.9% 18.8%

同じ患者から採取した3種類の組織を比べた研究で、吸引後に残った組織の血管の割合は、切除した組織と統計的な有意差がありませんでした。ただし5名の小規模な研究である点は踏まえておきたいところです。

内出血が強く見える理由

皮下出血斑は、細い血管から漏れ出た赤血球が皮膚を通して見えている状態です。ヘモグロビンが分解される過程で赤色から紫色、黄色へと色調が変化していくのは生理的な経過の一部であり、色が変わること自体は異常ではありません。

施術範囲が広くなるほど、その分だけ色の変化が及ぶ面積も広がるため、見た目の印象が実際の損傷の程度より強く出やすい構造があります。この必発の皮下出血斑と、合併症として頻度が数えられる血腫は別の事象であり、両者を同じ「内出血」という言葉で捉えると、警戒の配分を誤りやすくなります。

具体的な経過日数は個人差が大きいため、色調が変化しながら吸収されていく過程であることと、最終的な判定は数か月単位で行うという原則を押さえておくとよいでしょう。見た目の変化そのものよりも、痛みや腫れが日を追って増していないかを基準に観察することが、必発の現象と注意すべき変化を見分ける手がかりになります。

 

血管に関わる合併症の頻度と内訳

「ボロボロ」という噂が誤解だとわかった後に気になるのは、では実際に何を警戒すればよいのかという実務的な問いです。頻度と重大性は別の軸として捉える必要があり、この章では「稀」という言葉を具体的な数値に置き換えて整理します。

この章のポイント
・全合併症の発生率は約2.6%
・血管系の合併症は頻度が低い部類
・稀でも重大な事象は分けて理解

合併症全体の発生率は約2.6%

脂肪吸引に伴う合併症の発生率は、全体でおよそ2.6%と報告されています。39件の研究・患者29,368人を対象としたメタアナリシスでは、全合併症の発生率が2.62%となり、最も多いのは輪郭変形の2.35%、次いで色素沈着の1.49%でした。

出血や体液の貯留に関わる事象では、血清腫が0.65%程度、血腫が0.27%程度という水準にとどまっており、上位を占めるのは見た目に関わる事象であることがわかります。この解析は組み入れ研究の術式・麻酔法・追跡期間が均一でなく、対象は国外のデータである点には留意が必要です。

対象集団の平均年齢は40歳前後、平均BMIは26程度であり、自分の条件と近いかどうかを判断する目安になります。

合併症 発生率 95%信頼区間
輪郭変形 2.35% 1.05〜5.16%
色素沈着 1.49% 1.12〜1.99%
血清腫 0.65% 0.33〜1.24%
血腫 0.27% 0.12〜0.60%
静脈血栓塞栓症 0.017% 0.006〜0.053%
局所麻酔中毒 0.016% 0.004〜0.064%

頻度が低い事象ほど、起きたときの影響が大きい場合があります。静脈血栓塞栓症は肺の血管に血栓が詰まることで呼吸や循環に影響が及ぶ可能性があり、頻度の低さと重大性は別の軸として理解しておくことが欠かせません。

静脈血栓塞栓症は頻度が低く影響が大きい

静脈血栓塞栓症の発生率は0.017%程度と、合併症の中でも低い部類です。一方で、肺の血管に血栓が詰まった場合には呼吸や循環に重大な影響が及ぶ可能性があり、頻度の低さと重大性は分けて考える必要があります。なお、前述したメタアナリシスの対象集団では死亡例の報告はありませんでした。

長時間同じ姿勢を保つことや、施術範囲が広くなることは、一般的に血栓のリスクと関わりうるとされており、術後に体を動かすタイミングが医療機関から指示される背景にもなっています。ここで示した数値は起こる確率が低いことの説明であって、自分には起きないという保証ではない点は念頭に置いておきましょう。

脂肪塞栓症は術後24時間が中心

脂肪塞栓症は、術後24時間以内に症状が現れることが多い合併症です。公表された症例38例のレビューでは、症状発現の76%が術後24時間以内に集中しており、呼吸困難や低血圧、頻脈といった呼吸・循環に関わる変化が中心でした。

このレビューは公表された症例報告を集めたものであり、分母となる母数がわからないため発生率は算出できません。また、重症例や死亡例ほど報告・公表されやすいという偏りがあるため、レビュー内にある死亡例の割合を「この合併症で亡くなる人の割合」と読み替えることはできません。頻度を議論する際には、前述したメタアナリシスの0.017%という数値を基準にするのが妥当です。

国内では、2021年の1年間を対象とした全国調査でも対象3,093施設のうち回答は82施設にとどまっており、実態の把握そのものが難しい領域です。術後24時間にすぐ連絡できる窓口を、施術前に確認しておくとよいでしょう。

 

出血を抑える麻酔の仕組みと上限

血管に関わる合併症の頻度を踏まえると、次に気になるのは、その差を分けているものは何かという点です。脂肪吸引の出血を抑える仕組みは麻酔薬に組み込まれており、その仕組みが血管に関わる持病を禁忌にする理由にもなっています。

この章のポイント
・出血抑制は血管収縮薬の作用による
・血管の持病は禁忌に該当しうる
・麻酔総量が施術範囲の上限を決める

チュメセント液が血管を収縮させる

脂肪吸引で広く使われる膨潤局所麻酔(チュメセント麻酔)は、局所麻酔薬と血管収縮薬を生理食塩液で大量に希釈した溶液を、皮下に注入する方法です。血管収縮薬の作用で施術部位の血管が収縮し、術中の出血が抑えられる仕組みになっています。

この希釈液は各医療機関で用時調製されるのが一般的であり、市販されている配合製剤をそのまま用いる方法とは調製が異なります。血管収縮薬を含む局所麻酔薬として国内で認められている使い道は浸潤麻酔などであり、薄めて使う方法は、薬の公式な説明書(添付文書)に記載された使い方の範囲とは限らない点は押さえておきたいところです。

血管収縮薬にはアドレナリンが用いられることが一般的で、この作用によって施術中の出血量が抑えられるだけでなく、麻酔薬自体の吸収が緩やかになり、効果が長く続くという利点もあります。仕組みを理解しておくと、次に述べる禁忌がなぜ血管に関わる持病と結びつくのかが見えやすくなります。

局所麻酔薬の総量が施術範囲を決める

局所麻酔薬には添付文書上の用法及び用量が定められており、浸潤麻酔として使用できる1回あたりの液量にも上限があります。総量に上限がある以上、1回の施術で麻酔できる範囲にも実質的な上限が生まれます。

局所麻酔中毒の発生率は0.016%程度と頻度としては低い部類ですが、重大な副作用としてショックや意識障害、痙攣、心停止などが添付文書に記載されており、軽視してよい項目ではありません。範囲を欲張らないという判断は、こうした上限を踏まえた安全側の設計として理解できます。

複数の部位をまとめて施術したいという希望がある場合でも、麻酔薬の総量という制約が先に来るため、1回で対応できる範囲には自然な上限が生まれます。範囲を分割して複数回に分けるという進め方が提案されるのは、この総量の制約が背景にあるためです。

吸引量5リットル超で求められる体制

総吸引量が5リットルを超える脂肪吸引は、大量脂肪吸引と定義されています。平均総吸引量7.5リットルの310例を対象とした後ろ向き研究では、救急外来の受診が2例(0.6%)にとどまり、重大な心肺合併症や輸血を要した症例は報告されていません。

ただしこれは単一の術者・単一の施設による後ろ向き研究であり、原著自身も適切な術前・術中・術後のプロトコルを前提条件として結論づけています。米国での症例であり、日本で一般的に行われる吸引量の水準とも異なるため、「5リットルまでなら安全」と読み替えることはできません。量が増えるほど、求められる管理体制の水準も上がると理解しておくとよいでしょう。

大量脂肪吸引では体内の水分や電解質のバランスが変動しやすくなるため、術中・術後の輸液管理や継続的なモニタリングの比重が通常より高くなります。吸引量が増えるほど、こうした管理体制の有無が結果を左右する要素になります。提案された吸引量と、それに対する管理体制を対にして確認しておくと、判断の比較がしやすい状態になります。

 

受けられない人と確認すべき体制

麻酔の仕組みと上限を踏まえると、血管に関わる持病がある場合、麻酔の段階で対象外になりうることが見えてきます。

この章では添付文書に明記された禁忌を具体的に示したうえで、医療機関側の体制を確認可能な項目に落とし込みます。

この章のポイント
・血管収縮薬には明確な禁忌がある
・体制は雰囲気でなく項目で確認
・脂肪吸引には適応の境界がある

施術を避けるべき人・慎重な判断が必要な人

血管収縮薬を含む局所麻酔薬には、添付文書上いくつかの禁忌が明記されています。

  • 高血圧、動脈硬化、心不全のある人
  • 甲状腺機能亢進、糖尿病のある人
  • 血管攣縮の既往がある人
  • アミド型局所麻酔薬への過敏症の既往がある人
  • 特定の抗精神病薬やα遮断薬、カテコールアミン製剤やアドレナリン作動薬を投与中の人

これらの持病が禁忌とされているのは、血管収縮薬の作用によって血圧や心拍に影響が及ぶ可能性があるためです。持病の有無を正確に伝えることが、安全に施術を受けるための出発点になります。

血管収縮薬を含まない製剤とは禁忌の内容が異なるため、どの麻酔薬を使うかによって判断が変わる点も踏まえておく必要があります。妊娠中や授乳中の人、血液をさらさらにする薬を服用している人、出血しやすい体質を指摘されたことがある人は、自己判断をせずに事前に申告することが前提になります。

持病がある場合や服薬中の場合は、主治医への確認が先になります。また脂肪吸引は体重そのものを落とすための手技ではなく、部分的な形状の変化を目的とする施術である点も、適応を考えるうえでの前提になります。

カウンセリングで確認する5項目

医療機関の体制は、雰囲気ではなく確認可能な項目で見分けることができます。カウンセリングの段階で、次の5項目を具体的に確認しておくとよいでしょう。

  • 使用する麻酔薬の種類と持病・服薬との関係
  • 予定している吸引量と、その量に対する管理体制
  • 術中・術後のモニタリング体制
  • 術後24時間の連絡先と夜間・休日の対応
  • 合併症が起きた場合の対応方針と他医療機関との連携

術中のモニタリングでは、血圧や脈拍、酸素飽和度などを継続的に確認する体制が一般的です。どのような機器や人員でこれらを確認しているかを尋ねることも、判断材料の一つになります。

「絶対に安全です」「リスクはありません」といった説明だけが返ってくる場合、頻度と重大性を分けた説明ができていない可能性があります。費用については、一般的な目安として提示される金額に加えて、術後の再診や合併症対応が含まれるかどうかを確認しておくと、後の実務的な判断がしやすい材料になります。

カウンセリングは施術を決めるための場であると同時に、受けない判断をするための材料を得る場でもあります。

脂肪吸引以外の選択肢と適応の境界

脂肪吸引以外にも、食事や運動による減量、医療痩身といった選択肢があります。脂肪吸引は体重を落とすための手技ではなく、部分的な形状の変化を目的とする施術であり、全身の減量が目的であれば適応が異なります。

医療痩身には内服薬や注射剤を用いる方法などがあり、脂肪吸引とは仕組みも適応も異なります。どの選択肢が向いているかは悩みの種類や体質によって変わるため、カウンセリングで相談しながら整理していくことになります。

皮膚のたるみが主な悩みである場合、脂肪を減らすことだけでは解決しない領域もあります。血管に関わる持病があり麻酔の禁忌に該当する場合は、外科的な手技以外の選択肢を含めて検討することになります。確認したい5項目を事前にメモへ書き出しておくと、相談の場でも聞き漏らしにくくなります。

 

術後の経過とすぐ受診すべきサイン

受けられない人と確認すべき体制を踏まえて施術に進んだ場合、次に必要になるのが術後の自己観察です。この章では、自分で観察すべき対象を「見た目」ではなく「変化の方向」に置き換え、自宅でできる確認の手順を示します。

この章のポイント
・経過は変化の方向で判断する
・術後24時間は特に注意して観察
・リンパ管への影響は限定的に報告

回復の時間軸をどう捉えるか

術後の経過は、日数で一律に断定できるものではなく、施術範囲や体質、部位によって幅があります。具体的な日数を当てはめるよりも、症状が増えているか減っているかという変化の方向で判断する考え方が実用的です。

皮下出血斑は色調が変化しながら吸収されていく過程であり、色が変わること自体は経過の一部です。施術部位が一時的に硬く感じられる時期もあり、最終的な形の判定は数か月単位で行われるのが一般的です。圧迫固定や安静の指示は施術内容によって異なるため、期間を自己判断せず、医療機関の指示に従うことが基本になります。

体質や施術範囲によって回復の速さには差があるため、同じ施術を受けた人同士でも経過が異なるのは自然なことです。他の人との比較よりも、自分自身の前日との比較を基準にする方が実務的です。

腫れ・皮下出血斑・施術部位の硬さは、それぞれ見るべき視点と受診の目安が異なります。

症状 自宅での観察の視点 受診を考える目安
腫れ 前日より増えていないか 2日続けて悪化
皮下出血斑 色の変化が滞っていないか 痛みを伴う場合
施術部位の硬さ 範囲が広がっていないか 数か月改善しない場合

この表は診断を下すためのものではなく、連絡するかどうかを判断するための材料として使うものです。

自宅でできる術後セルフチェック

自宅でのセルフチェックは、医学的な診断ではなく、連絡すべきかどうかを判断するための目安です。一例として、次のような手順が考えられます。

  1. 起床後など同じ時間帯に、施術部位を左右そろえて撮影し前日と比べる
  2. 施術していない側の脚に左右差のある腫れや痛み、熱感がないか確かめる
  3. 階段を上るなど軽い動作での息切れや胸の苦しさが強まっていないか確かめる
  4. 体温を測り、記録する

①〜④のいずれかで前日より悪化している状態が2日続く場合、または②③に該当する症状が新たに出た場合は、医療機関に連絡することが目安になります。②③は静脈血栓塞栓症や脂肪塞栓症で報告されている症状に対応しており、特に術後24時間は注意して観察したい時間帯です。

リンパ管への影響と長期の見方

皮下組織には血管と並んでリンパ管が分布しており、むくみの持続と関わりがあります。リンパ浮腫の治療として脂肪吸引を行った検討では、間接リンパシンチグラフィによる評価で、術後3か月および12か月の画像に変化がなく、すでに低下していたリンパ輸送がさらに低下していないことが示唆されています。

下肢のリンパ管を対象とした屍体研究でも、四肢の長軸方向に沿って吸引した場合、筋膜上のリンパ管に重大な損傷は起こりにくいと報告されています。ただしこれらの対象はリンパ浮腫の患者であり、美容目的で脂肪吸引を受ける人とは前提が異なる点には注意が必要です。数年単位の長期的な影響については、質の高い追跡研究が十分ではなく、確立した結論があるとは言えないのが現状です。

血管だけでなくリンパ管にも触れるのは、皮下組織を吸引するという構造上、両者がセットで語られることが多いためです。むくみが長引く背景を知っておくと、術後の変化を過度に不安視せずに済みます。

強い痛みや急な発熱、呼吸の変化、意識がはっきりしない状態がある場合は、様子を見ずに救急対応を検討する状況です。気になる変化が2日続く場合や、新たな症状が出た場合も、様子を見ずに医療機関へ連絡することが基本になります。

 

脂肪吸引の血管ボロボロによくある質問

脂肪吸引と血管に関して、特によく寄せられる質問に要点だけをまとめてお答えします。

脂肪吸引で血管がボロボロになるというのは本当ですか

細い血管の一時的な損傷は避けられませんが、恒久的に壊れるという意味では正確ではありません。吸引後の組織にも微小血管が残っていたことが確認されています。

脂肪吸引で血栓ができる確率はどのくらいですか

静脈血栓塞栓症の発生率は0.017%程度と報告されていますが、頻度が低くても発生時の重大性は分けて考えるべきです。

高血圧や糖尿病があると脂肪吸引は受けられませんか

血管収縮薬を含む麻酔薬では禁忌に該当するため、使用する麻酔薬の種類と持病の申告が前提になります。麻酔の種類によって判断は変わります。

術後の内出血が広範囲に出ましたが、様子を見てよいですか

範囲の広さよりも変化の方向で判断します。痛みや腫れが増している場合や、呼吸の変化がある場合は医療機関へ連絡してください。

脂肪吸引の後、血管や体には長期的な影響が残りますか

数年単位の長期的な影響については、質の高い追跡研究が十分でなく、確立した結論はまだないというのが現状です。

 

まとめ

「脂肪吸引で血管がボロボロになる」という不安は、細い血管の一時的な損傷という必発の現象と、頻度は低くとも重大な血管系の合併症とを、分けて考えることで整理できます。吸引後に残った組織にも微小血管が保たれていたという実測は、この記事の答えの中心ですが、小規模な研究であるという限界もあわせて押さえておきましょう。

血管に関わる持病がある場合は、麻酔の段階で判断が変わる点も見落とせません。ここで示した数値は確率の説明であり、個人への保証ではないため、術後24時間は変化の方向を基準に観察することが、必発の現象と注意すべき変化を見分ける実務的な手がかりになります。

自分の場合にどこまで警戒すべきかを整理したい場合は、カウンセリングで、麻酔薬の種類や管理体制について確認してみるのも一つの方法です。

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参考文献・出典

  • Comerci AJ ほか「Risks and Complications Rate in Liposuction: A Systematic Review and Meta-Analysis」Aesthetic Surgery Journal(2024年。39研究・29,368人を対象。全合併症2.62%、輪郭変形2.35%、色素沈着1.49%、血清腫0.65%、血腫0.27%、静脈血栓塞栓症0.017%、局所麻酔中毒0.016%)
  • Bertheuil N ほか「Liposuction Preserves the Morphological Integrity of the Microvascular Network」Aesthetic Surgery Journal(2016年。腹壁形成術時に採取した組織をn=5で比較。共焦点顕微鏡によるCD31陽性血管は一塊切除8.2%、吸引脂肪1.6%、吸引後の残存組織8.9%で、一塊切除との有意差なし)
  • Kao YM ほか「Pulmonary Fat Embolism Following Liposuction and Fat Grafting: A Review of Published Cases」Healthcare(2023年。公表された38例のレビュー。症状発現の76%が術後24時間以内)
  • Outpatient-Based High-Volume Liposuction: A Retrospective Review of 310 Consecutive Patients(Aesthetic Surgery Journal、2023年。平均総吸引量7.5L、救急外来受診2例)
  • Liposuction Treatment of Lymphedema(Seminars in Plastic Surgery、2018年)
  • 血管収縮薬を含有する局所麻酔薬の添付文書(高血圧・動脈硬化・心不全・甲状腺機能亢進・糖尿病・血管攣縮の既往のある患者等への使用は禁忌。重大な副作用としてショック、意識障害、痙攣、心停止等を記載)
  • 美容医療における合併症実態調査と診療指針の作成及び医療安全の確保に向けたシステム構築への課題探索(厚生労働科学研究、令和3年度。対象3,093施設のうち回答82施設)

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