鏡を見るたびに、ふと気になる口元から鼻までの距離。ほんの数ミリの変化で、顔全体の印象が洗練される人中短縮。その劇的な効果に心惹かれながらも、あなたの心を重く縛り付けているのは、「傷跡は本当に綺麗になるのだろうか?」という、たった一つの、しかし根深い不安ではないでしょうか。
ネット上には、まるで魔法のように美しくなった成功例と、見るのも辛い失敗談が溢れています。その情報の洪水の中で、何を信じれば良いのか分からなくなり、検索してはため息をつく検索疲れに陥っている人も少なくありません。
ここでは、人中短縮の傷跡に関する医学的な真実を徹底的に解説します。なぜ傷跡が不安になるのかという深層心理から、術後のリアルな経過、ダウンタイムの過ごし方、そして後悔しないための賢い選択基準まで。読み終える頃には、漠然とした不安は具体的な知識へと変わり、ご自身がどう行動すべきかの明確な道筋が見えているはずです。

国立熊本大学医学部を卒業。国内大手美容クリニックなどで院長を歴任し、2023年アラジン美容クリニックを開院。長年の実績とエイジングケア研究で博士号取得の美容医療のプロ。「嘘のない美容医療の実現へ」をモットーに、患者様とともに「オンリーワン」を目指す。
なぜ人中短縮の傷跡がこれほど不安になるのか?
人中短縮という施術について調べれば調べるほど、期待と同じくらい、あるいはそれ以上に傷跡への不安が膨らんでいくなど、そのお気持ち、よくある話です。ここでは、一度立ち止まり、なぜ私たちの心がこれほどまでに傷跡に揺さぶられるのか、その本質を探っていきましょう。
これは単なる美容医療の解説ではありません。あなたの心の内側を丁寧に紐解き、漠然とした不安の正体を突き止めるための時間です。ご自身の心のメカニズムを理解することで、冷静な判断軸を取り戻し、情報に振り回されないための第一歩を踏み出すことができるはずです。
心を縛る「完璧な美」へのこだわりと呪縛?
人中短縮をご検討される方々はご自身の顔のバランスを深く理解し、あと数ミリ短ければ、という理想のイメージを明確にお持ちのはずです。
しかし、その強いこだわりは、時として自らを縛る「呪縛」にもなり得ます。特に、ご自身の顔を一つの「作品」のように捉え、完璧な仕上がりを求める方にとって、傷跡という要素は、計り知れない恐怖として映ります。丹精込めて仕上げる芸術作品に、もし一本でも意図しない線が入ってしまうとしたら…?それを到底、許容できないと感じるのではないでしょうか。
人中短縮における傷跡は、まさにこのコントロール不能な線です。医師の技術や術後のケアで限りなく目立たなくすることはできても、完全に「ゼロ」にすることは現代の医療では不可能です。この「自分の努力や意思だけではどうにもならない領域」が存在するという事実が、「完璧でありたい」と願う心と衝突し、大きな不安を生み出すのです。
その恐怖の根源は、単に傷が残るという見た目の問題だけでなく、「理想とする完璧な自分のイメージが損なわれるかもしれない」という、アイデンティティに関わる深いレベルの恐れなのかもしれません。
情報の溢れがもたらす疲れと判断軸の喪失
SNSには、特殊な照明や画像加工を駆使した、息をのむほど美しい仕上がりの写真が溢れています。それらは希望を与えてくれる一方で、無意識のうちに「これが当たり前なのだ」という非常に高いハードルを心の中に設定してしまいます。その対極として、ごく一部の極端な失敗例や、術後間もない赤みの強い傷跡の画像は、一度見てしまうと脳裏に焼き付き、まるでそれが自分にも起こるかのような錯覚を引き起こします。
この両極端な情報のシャワーを浴び続けることで、私たちは本来あるべき「平均的な経過」や「客観的な事実」を見失い、冷静な判断軸を喪失してしまうのです。そして、確かな答えを求めてさらに検索を続けるという、出口のないループに迷い込むかもしれません。
これが、多くの経験者が語る「情報疲れ」の正体です。現代特有の「情報の洪水」が引き起こす、誰にでも起こりうる現象なのです。大切なのは、情報との正しい距離感を取り戻すことではないのでしょうか。
人中短縮の傷跡はどこにできる?医学的真実と経過
前章では、人中短縮の傷跡に対する不安の正体が、ご自身の「完璧な美へのこだわり」や「情報の洪水」にあることを紐解きました。心の準備ができた今、次はその不安を具体的な知識で解消していく番です。
ここでは一転して、客観的かつ医学的な事実に焦点を当て、傷跡が「どこに」「どのように」でき、「どのような経過をたどるのか」を徹底的に解説します。曖昧な情報に振り回されるのは、もう終わりにしましょう。正しい知識は、あなたを冷静な判断へと導く最も信頼できる羅針盤となるはずです。
傷跡の位置とデザイン|切開線はこうして決まる
まず、最も気になる「傷跡は一体どこにできるのか?」という疑問にお答えします。人中短縮で現在主流となっている「鼻下切開法(びかぜっかいほう)」では、その名の通り、傷跡は鼻のすぐ下にできます。具体的には、小鼻の付け根の溝に沿って、鼻柱(鼻の穴を左右に隔てている壁)の付け根を横切るように切開ラインがデザインされます。
なぜこの場所なのでしょうか。それは、医師が傷跡を可能な限り目立たなくするために、顔の解剖学的な構造を最大限に利用しているからです。鼻の下には、小鼻の付け根の影や、皮膚の色の境界線、鼻の立体的な構造など、傷跡をカモフラージュしてくれる要素が元々存在します。経験豊富な医師は、ただ皮膚を切除するのではなく、これらの線や影に切開ラインを精密に重ね合わせることで、術後の傷跡がまるで元々そこにあったシワや影の一部であるかのように見せるのです。
さらに、デザインは一人ひとりのお顔立ちに合わせてオーダーメイドで微調整されます。例えば、より傷跡を自然に見せるために小鼻の縁に沿って切開をわずかに延長したり、正面から見える傷の長さを極力短くするために切開ラインの一部を鼻の穴の中(鼻腔内)に入れたりする工夫も行われます。これはまさに、医師の美的センスと外科学的な技術が融合する領域と言えるでしょう。
傷跡の経過を追う全タイムライン
人中短縮の傷跡は、手術が終わった瞬間に完成するわけではありません。皮膚が治癒していく過程で、時間と共にその見た目は変化していきます。術後の経過を知っておくことは、日々の変化に一喜一憂せず、落ち着いてダウンタイムを過ごすために非常に重要です。
以下の表で、術後から傷跡が成熟するまでのおおよそのタイムラインを確認し、具体的なイメージを掴んでみましょう。
時期 | 傷跡の状態 | 一般的なケア | 注意点 |
---|---|---|---|
術後〜1週間 | 赤みが強い、腫れ、縫合糸がある状態。 | 処方された軟膏の塗布、保護テープによるケア。 | 傷に負担をかけないよう、大きく口を開ける動作は避ける。傷を濡らさないように注意。 |
1ヶ月後 | 赤みは残るが少しずつ落ち着く。傷が硬くなったり(拘縮)、少し盛り上がったりすることがある。 | 紫外線対策(UVケア)を徹底する。保湿を心がける。 | 傷を強くこすったり、マッサージしたりするのは避ける。 |
3ヶ月〜半年後 | 赤みがさらに引き始め、茶色っぽさ(色素沈着)を経て、徐々に肌色に近づく。傷の硬さも和らんでくる。 | 紫外線対策は継続。必要に応じて色素沈着を改善する内服薬などが処方されることも。 | 気になることがあれば、定期的に医師の診察を受け、傷跡の状態を確認してもらう。 |
半年〜1年後 | 傷跡が「成熟」し、細く白い線状に落ち着く。ほとんどの場合、メイクで十分にカバーできるレベルになる。 | 紫外線対策は年間を通して行うことが望ましい。 | 多くの場合、この時期の状態で傷跡は完成に近くなる。 |
特に術後1〜3ヶ月の時期に見られる傷の硬さや盛り上がりは「拘縮(こうしゅく)」と呼ばれ、傷が治る過程で起こる正常な生体反応です。この時期に「失敗したかも」と不安になる方が多いのですが、時間の経過と共に必ず和らいでいきますので、焦らずに見守ることが大切です。
傷跡が目立ちやすい医学的要因
同じ医師が同じ手術を行っても、傷跡の経過や最終的な仕上がりには個人差が生じることがあります。その背景には、医師の技術だけでなく、患者様ご自身の「体質」や「生活習慣」が関わっている場合があります。後悔しないためにも、ご自身に当てはまる可能性のある要因を事前に知っておきましょう。
①ケロイド体質・肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)になりやすい体質
傷が治癒する過程で、皮膚の線維組織(コラーゲン)が過剰に作られてしまい、傷跡が赤くミミズ腫れのように盛り上がってしまう体質のことです。過去の怪我や手術の跡が盛り上がった経験がある方は、カウンセリングの際に必ず医師に申告してください。
②アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患
皮膚のバリア機能が低下している方や、炎症を起こしやすい肌質の方は、傷の治りが通常より遅れたり、色素沈着が長引きやすかったりする傾向があります。
③喫煙
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血流を悪化させます。これにより、傷の治癒に必要な酸素や栄養素が皮膚に十分に行き渡らなくなり、創傷治癒の遅延や感染症のリスクを高めることが医学的に証明されています。美しい傷跡のためには、術前後の一定期間の禁煙が強く推奨されます。
④栄養状態の偏りや不規則な生活
皮膚の細胞が再生するためには、タンパク質やビタミン、ミネラルといった栄養素が不可欠です。過度なダイエットや偏った食事、睡眠不足は免疫力を低下させ、傷の治りに悪影響を及ぼす可能性があります。
人中短縮の術後の生活をイメージしよう!ダウンタイムの全体像
さて、傷跡が時間をかけて綺麗になっていく医学的なプロセスをご理解いただけたところで、次はいよいよ、手術直後からの「リアルな生活」に目を向けてみましょう。人中短縮のダウンタイムは、傷跡のケアだけではありません。多くの方が気になる「腫れ」や「痛み」、そして食事や会話といった「日常生活への影響」も伴います。
「仕事は何日から行ける?」「食事は普通にできるの?」こうした現実的な疑問を解消し、術後の生活を具体的にシミュレーションすることで、心の準備を万全に整えることができます。ここからの解説を読めば、ダウンタイムというトンネルの先に、どんな日常が待っているのかを、きっと鮮明にイメージできるはずです。
腫れ・内出血・痛みのピークと持続期間
手術後のダウンタイムと聞いて、多くの方がまず思い浮かべるのが「腫れ」「内出血」「痛み」という3つの症状でしょう。これらは身体が受けたダメージに対して正常に回復しようとしている証拠(治癒反応)であり、避けては通れないプロセスです。しかし、それぞれの症状のピークと持続期間をあらかじめ知っておくことで、精神的な負担は大きく軽減されます。
腫れについて
まず「腫れ」ですが、そのピークは多くの場合、手術当日よりも翌日、翌々日の術後2〜3日目にやってきます。この時期は鼻の下から唇にかけて、パンパンに腫れているように感じることが多いでしょう。しかし、その大きな腫れは永遠に続くわけではありません。
一般的には術後1〜2週間をかけて徐々に引き、周囲から見ても違和感が少ない状態に落ち着いていきます。ただし、ご自身だけが感じるような、むくみに似たわずかな腫れ感が完全になじむまでには、1ヶ月から3ヶ月ほどかかる場合もあります。
内出血について
「内出血」は、手術操作によって皮下の細かい血管が傷つくことで起こります。必ずしもすべての方に出るわけではありませんが、皮膚の薄い方はやや出やすい傾向にあります。内出血が出た場合、最初は紫色や青っぽい色をしていますが、時間と共に黄色く変化し、通常は1〜2週間程度で自然に吸収され消えていきますのでご安心ください。
痛みについて
手術中の痛みについては、局所麻酔や静脈麻酔を使用するため、感じることはありません。多くの方が心配されるのは術後の痛みですが、麻酔が切れた後も「我慢できないほどの激痛」が続くことは稀です。
ジンジンとした鈍い痛みや、傷口の違和感を感じることがありますが、クリニックから処方される鎮痛剤を服用すれば、十分にコントロールできる範囲のことがほとんどです。痛みのピークも腫れと同様、術後2〜3日が一般的です。
日常生活における注意点(食事・会話・歯磨きなど)
ダウンタイム中は、普段何気なく行っている日常動作にも、少しだけ工夫と配慮が必要になります。特に口周りの動きは、傷口に直接影響を与えるため注意が必要です。
食事
術後、特に抜糸が行われるまでの約1週間は、できるだけ傷に負担をかけない食生活を心がけましょう。大きく口を開ける必要がある硬いものや、噛むのに力が必要なものは避けるのが賢明です。
具体的には、ゼリーやヨーグルト、スープ、おかゆ、豆腐など、あまり噛まずに食べられる柔らかいものがおすすめです。また、香辛料などの刺激物や、熱すぎるものは血行を促進し、腫れや痛みを増強させる可能性があるため、しばらくお休みしましょう。
会話・表情
親しい友人との楽しいおしゃべりや、面白いテレビ番組を見て大笑いしたくなることもあるでしょう。しかし、術後しばらくの間は、大きく口を開けて笑ったり、長時間話し続けたりする行為は、縫合した傷口にテンションをかけてしまいます。
これが痛みの原因になったり、長期的には傷跡の仕上がりに影響したりする可能性もゼロではありません。意識的に、穏やかな表情と話し方を心がけてみてください。
歯磨き
歯磨きの際は、歯ブラシが傷口に当たらないよう、細心の注意が必要です。特に前歯を磨くときは、唇をめくりすぎないように気をつけましょう。この期間は、ヘッドの小さな子供用の歯ブラシを使用したり、刺激の少ないデンタルリンスを併用したりするのも良い方法です。
幸いなことに、人中短縮のダウンタイム中は、マスクをしていれば手術したことがほとんど分かりません。腫れや内出血はもちろん、抜糸前の縫合糸もマスクで自然にカバーすることができます。そのため、接客業などお顔を見せるお仕事でなければ、多くの方が手術から数日〜1週間程度で、無理なく社会生活に復帰されています。
人中短縮で後悔しないために賢く施術を受けるには?
人中短縮の術後経過やダウンタイム中の生活がリアルに想像できたら、全てを医師任せにする「受け身の患者」でいるのではなく、自らも積極的に治療に参加し、リスクを管理する「賢い患者」になることもポイントになります。
人中短縮の成功は、医師の技術だけで決まるものではありません。これからご紹介する3つの戦略を実践することで、あなたは後悔しないための最善の道を、自らの手で切り拓くことができるのです。
ポイント1|医師選びで見るべき客観的指標と主観的相性
人中短縮の成否の8割は、医師選びで決まると言っても過言ではありません。無数のクリニックと医師の中から、運命のパートナーを見つけ出すために、「客観的な技術力」と「主観的な相性」という2つの視点を持ちましょう。
まず注目すべき客観的な指標が、医師が「日本形成外科学会認定 形成外科専門医」の資格を持っているか否かです。形成外科とは、体の表面に生じた組織の異常や変形、欠損などに対して、機能のみならず形(見た目)も正常に、美しく再建することを目指す医学の一分野です。
つまり、「形成外科専門医」であることは、人体の構造を熟知し、「傷をいかに綺麗に治すか」という訓練を専門的に積んできたプロフェッショナルであることの客観的な証明になります。
一方で、どれほど優れた資格を持っていても、あなたとの相性が合わなければ意味がありません。ここで重要になるのが主観的な視点です。
一つは、症例写真の美的感覚が自分と合うかかもしれません。クリニックのウェブサイトやSNSに掲載されている症例写真を見て、あなたが素直に「この仕上がり、好きだな」「美しいな」と感じられるかどうかは極めて重要です。目指すゴールのイメージが医師とずれていては、満足のいく結果は得られません。
もう一つは、「カウンセリングで正直にリスクを話してくれるか」です。メリットばかりを強調し、デメリットやリスクについて曖昧な説明しかしない医師には注意が必要です。あなたの不安に真摯に耳を傾け、できないことは「できない」と正直に伝え、考えうるリスクまで包み隠さず話してくれる医師こそ、心から信頼できるパートナーと言えるでしょう。
ポイント2|カウンセリングで必ず確認すべき魔法の質問リスト
理想の医師候補が見つかったら、次はいよいよカウンセリングです。ここは、医師の技術力や人柄、そしてあなたとの相性を最終的に見極めるための最も重要な舞台。緊張して聞きたかったことを忘れてしまわないよう、お守り代わりに「質問リスト」を準備していくことを強くお勧めします。以下の「魔法の質問」は、医師の本質を見抜く上で非常に役立ちます。
私の顔のバランスの場合、最適な切開デザインはどのような形になりますか?また、それによって考えうるリスク(小鼻の広がり、後戻りなど)を具体的に教えてください。
→ この質問で、医師があなたの顔をパーソナライズして分析し、画一的でないオーダーメイドの提案をしてくれるかどうかが分かります。
先生の縫合方法のこだわりや、傷跡を少しでも綺麗にするために行っている工夫があれば教えてください。
→ この質問に対する答え方で、医師の傷跡に対する意識の高さや、技術的なこだわり、そして自信のほどを垣間見ることができます。
万が一、術後に傷跡が気になってしまった場合、どのような修正治療の選択肢がありますか?
→ 最悪の事態まで想定し、誠実なアフターフォロー体制を整えているかどうかを確認できます。この質問に真摯に答えてくれる医師は、最後まで患者に寄り添う覚悟があると言えるでしょう。
これらの質問に、面倒くさがらず、専門用語を噛み砕きながら丁寧に答えてくれるかどうか。その「態度」も、医師を見極める重要な判断材料になります。
ポイント3|あなた自身ができる、結果を左右する術後セルフケア
素晴らしい医師に出会い、手術が無事に終わった瞬間から、美しい結果を育むためのバトンは、あなた自身に渡されます。医師の技術を120%活かすも、80%で留めてしまうも、ここからの術後セルフケアにかかっているのです。あなた自身が結果に貢献できる、具体的なケアをご紹介します。
徹底した紫外線対策
術後の傷跡は非常にデリケートで、紫外線を浴びると色素沈着を起こしやすく、茶色い跡として残りやすくなります。術後少なくとも半年〜1年間は、日焼け止め(低刺激性のもの)はもちろん、帽子や日傘、マスクなどを活用し、徹底的に紫外線をブロックしましょう。
丁寧な保湿
傷跡周辺の皮膚が乾燥すると、皮膚のバアリア機能が低下し、正常な治癒プロセスが妨げられることがあります。洗顔後は、処方された軟膏や低刺激の保湿剤で優しくケアし、皮膚を健やかな状態に保ちましょう。
禁煙の継続
喫煙が傷の治りを遅らせることは、医学的な事実です。美しい傷跡のためには、術前から禁煙を開始し、少なくとも術後3ヶ月以上は継続することが強く推奨されます。これは、あなたができる最も効果的なセルフケアの一つです。
美を作る栄養バランス
私たちの皮膚は、日々の食事から作られています。特に、皮膚の材料となるタンパク質、コラーゲンの生成を助けるビタミンC、細胞の再生を促す亜鉛などを意識した、バランスの良い食事を心がけることが、内側からの回復力を高めます。
これらの地道な努力の一つひとつが、数ヶ月後、一年後のあなたの笑顔と満足度に直結します。「美は一日にしてならず」。術後の丁寧なセルフケアこそが、後悔しないための最後の鍵なのです。
傷跡以外のリスクと万が一の対策方法について
信頼できる医師を選び、カウンセリングで疑問を解消し、術後のセルフケアも万全に行う。ここまで読み進めてくださったあなたは、「賢い患者」として後悔しないための準備を整えつつあるはずです。しかし、私たちのクリニックは、あなたの心にわずかでも残るかもしれない「もしも」の不安にも、最後まで真摯に向き合いたいと考えています。
ここでは、傷跡以外の潜在的なリスクと、万が一問題が起きた場合の具体的な対策、つまり「セーフティネット」について解説します。
小鼻の広がり・後戻り・ガミースマイル等の可能性
人中短縮は、単に鼻の下の皮膚を短くするだけの単純な手術ではありません。お顔全体のバランスの中で行われる繊細な施術だからこそ、周囲のパーツに意図しない変化をもたらす可能性もゼロではありません。ここでは、代表的なリスクとその回避策について解説します。
小鼻の広がり
鼻の下の皮膚を切除し、上唇側を上方に引き上げて縫合する際、その力に引っ張られて小鼻(鼻翼)が横に広がって見えてしまうことがあります。特に鼻翼の付け根が浅い方は、この影響を受けやすい傾向にあります。
経験豊富な医師は、このリスクを最小限に抑えるため、デザインの段階で力の向きを計算に入れます。また、必要に応じて、鼻翼の付け根の組織を中央に引き寄せて固定する処置を同時に行ったり、切開ラインを鼻の穴の中に少しだけ延長したりすることで、外側に引っ張られる力を緩和する工夫を行います。
後戻り
術後しばらくして、短縮したはずの人中が少し伸びてしまったように感じる「後戻り」。これは、皮膚の切除量が足りなかった場合や、口を動かす筋肉(口輪筋)の力によって、皮膚が徐々に引き伸ばされることで生じる可能性があります。
後戻りを防ぐ鍵は、皮膚だけでなく、その下にある口輪筋の処理にあります。多くのクリニックでは、皮膚切除と同時に、緩んだ口輪筋を短縮して引き上げ、鼻の土台となる部分にしっかりと固定する処置を併用します。これにより、効果の持続性を高め、後戻りのリスクを大幅に低減させることが可能です。
ガミースマイルの変化
人中短縮を行うと、上唇が物理的に上へと引き上げられます。そのため、元々笑った時に歯茎が見えやすい「ガミースマイル」の傾向がある方は、その症状が術後にやや目立つようになる可能性があります。一方で、ごく軽度のガミースマイルであれば、むしろ改善されるケースもあります。
これには医師による正確な術前診断が不可欠です。カウンセリングで、笑った時の表情もしっかりと確認してもらい、ご自身がどのタイプに当てはまるのか、どのような変化が予測されるのかを、事前に詳しく説明してもらうことが重要です。
傷跡修正治療という選択肢
最善の技術と丁寧なセルフケアをもってしても、ご自身の体質や術後の予期せぬ経過によって、どうしても傷跡が目立ってしまい、気になってしまう…。そんな「万が一」の場合にも、道が閉ざされるわけではありません。
まず最も重要なのは、焦って結論を出さないことです。術後の傷は、赤みや硬さが半年から1年かけてゆっくりと成熟していきます。この治癒過程の最中に手を加えてしまうと、かえって傷を悪化させてしまうリスクがあります。そのため、傷跡の修正治療を検討するタイミングは、一般的に術後半年〜1年以降、傷の状態が完全に落ち着いてから、というのが医学的な鉄則です。
傷跡の状態に応じて、様々な治療法が選択されます。
- 注射による治療(ステロイド注射):傷跡が赤くミミズ腫れのように盛り上がってしまった場合(肥厚性瘢痕やケロイド)に行われます。ステロイド薬を傷跡に直接注射することで、過剰な炎症反応を抑え、盛り上がりを平坦にしていく効果が期待できます。
- レーザー治療:フラクショナルレーザーなどを照射することで、傷跡の皮膚の再生を促し、凹凸や質感を周囲の正常な皮膚となじませていく治療法です。赤みを改善するレーザーが用いられることもあります。
- 外科的な修正手術(瘢痕形成術):上記の治療で改善が見られない場合や、傷跡の幅が広い、引きつれがあるといった場合には、現在の傷跡を一度きれいに切除し、形成外科的な技術(W形成術やZ形成術など)を用いて、再度丁寧に縫合し直す手術が行われます。
大切なのは、一人で悩まず、まずは手術を担当した医師に正直に相談することです。信頼できる医師であれば、あなたの悩みに真摯に耳を傾け、最適な解決策を一緒に考えてくれるはずです。この「いざとなれば修正できる」という事実が、あなたの心を軽くし、安心して一歩を踏み出すための、力強いお守りとなるでしょう。
まとめ
人中短縮の傷跡という、最もデリケートなテーマについて、ここまでお読みいただき、ありがとうございます。傷跡が不安になる心理的な背景から、医学的な経過の全タイムライン、ダウンタイムの具体的な過ごし方、そして後悔しないための医師選びとセルフケアまで、多角的に解説してまいりました。
重要なのは、「傷跡のリスクはゼロではない。しかし、正しい知識を持ち、信頼できる医師と共に対策を尽くすことで、そのリスクは限りなく最小限に抑えられる」という事実です。そして、その結果を左右する最も大切な要素は、この記事を読んでいるあなた自身が、主体的に情報を吟味し、賢く選択する力を持つことに他なりません。魔法のような施術はありませんが、医学的根拠に基づいた最善の選択は確かに存在するのです。
もし、もう少し具体的な話を聞いてみたいと感じたなら、それは心が次の一歩を求めているサインです。まずは一度、勇気を出してカウンセリングを受けてみてください。不安一つひとつに真摯に耳を傾け、最善の道を一緒に見つけてくれる医師に出会うことはとても重要です。あなたのその一歩が、未来の笑顔に繋がることを心から願っています。
アラジン美容クリニックでは、美容医療および美容皮膚における長年の経験や博士号を持つ知見より、出逢う皆様のお一人ひとりに最適な施術を提供する「オンリーワン」を目指すカウンセリングを実施し、余計な情報や提案をせず、「ウソのない」美容医療で、必要な施術のみをご提案しております。
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