脂肪吸引は、短期間でボディラインを整える施術として人気を集めていますが、その一方で「跡が残ってしまった」「傷がいつまでも消えない」といった不安の声も少なくありません。
術後に現れる赤み・しこり・色素沈着などは、ある程度は医学的に想定される経過である一方、長引く場合や目立つ跡が残るケースでは医療的な対処が必要になることもあります。美容目的で受けたはずの施術が逆にコンプレックスにつながらないためには、原因の理解と適切な対応が不可欠です。
ここでは、脂肪吸引後に残る跡の種類やその原因、正常か異常かの見極め方、症状に応じた治療法、そして信頼できるクリニック選びまでを、専門的視点から網羅的に解説します。不安を抱える方が、安心して今後の判断を行えるよう、医学的根拠に基づいた情報を提供します。

国立熊本大学医学部を卒業。国内大手美容クリニックなどで院長を歴任し、2023年アラジン美容クリニックを開院。長年の実績とエイジングケア研究で博士号取得の美容医療のプロ。「嘘のない美容医療の実現へ」をモットーに、患者様とともに「オンリーワン」を目指す。
脂肪吸引後の跡はなぜ残る?医学的に見る3つの原因と症状分類
脂肪吸引を受けたあと、見た目の変化に満足する一方で「施術跡が気になる」「しこりのような硬さが残っている」と不安を感じる方も少なくありません。とくに術後しばらくしてから現れる赤み、盛り上がり、色ムラなどの症状は、自分では正常なのか異常なのか判断しにくいものです。
しかし、これらの多くは身体が傷を修復する過程で生じる一時的な反応であり、適切な知識を持っていれば慌てる必要はありません。一方で、放置すべきでない異常のサインが潜んでいることもあります。
ここでは、脂肪吸引後に起こり得る「跡」の種類とその医学的メカニズム、発生時期別の経過パターン、そして正常と異常を見分けるためのチェックポイントを専門的な視点から丁寧に解説します。
種類別|肥厚性瘢痕・色素沈着・拘縮とは?
脂肪吸引は、カニューレ(吸引管)を皮下に挿入して脂肪を取り除く施術です。このプロセスで皮膚やその下の組織に物理的なダメージが加わり、術後には以下のような反応が現れることがあります。
①肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)
術後の傷跡が赤く盛り上がる瘢痕。過剰なコラーゲンの生成により起こり、摩擦刺激や体質的な要素も関与します。自然に目立たなくなることもありますが、一定期間経っても改善しない場合には、ステロイド注射などの治療が考慮されます。
②炎症後色素沈着(PIH)
皮膚の炎症後にメラニンが沈着して黒ずんだり茶色く見える状態。術後の紫外線曝露が悪化要因となるため、日焼け対策は必須です。美白外用薬やレーザー治療で軽減が見込まれます。
③拘縮(こうしゅく)
脂肪を吸引したスペースが癒着し、皮膚が引きつれるように硬くなる現象。凹凸感やしこりとして感じられることもありますが、多くは術後6カ月以内に改善傾向を示します。症状が強い場合は、POTENZAなど再生治療を検討することもあります。
時期別の症状|術後1週間〜半年までの経過パターン
脂肪吸引後の跡は、時間の経過とともに変化します。経過を正しく知ることで、安心できる材料にもなり、不安なサインを見極める助けにもなります。
術後期間 | 主な症状 | 医学的解釈 |
---|---|---|
術後1〜2週間 | 赤み・腫れ・軽度の硬さ | 炎症反応として自然な反応 |
術後2週間〜1カ月 | 瘢痕形成や色素沈着が表面化 | 組織再構築の一環 |
術後1〜3カ月 | 拘縮・しこり・色ムラが目立ちやすい | 一時的な癒着の影響 |
術後3〜6カ月 | 徐々に軽減するが、強く残る場合は異常 | 医療相談の検討が必要 |
大半の症状は自然に軽快しますが、6カ月を超えて改善が見られない場合は、何らかの異常が関与している可能性があります。
【正常vs異常】見分けるべき注意サイン
自己判断が難しい「脂肪吸引の跡」ですが、以下のような症状が見られる場合は、異常の兆候として担当医にしっかり診てもらう必要があります。
- 赤黒い盛り上がった傷が半年以上改善しない
- 硬いしこりが大きくなる、または痛みを伴う
- 拘縮により皮膚の引きつれが顕著で、可動域に影響が出ている
- 色素沈着が濃く、外用薬でも変化がない
特に、生活の質に支障が出ている場合や精神的ストレスを感じている場合には、すぐに専門医に診てもらいましょう。
傷跡を残さないために|脂肪吸引前後に行うべきケアと医療対策
前章では、脂肪吸引後に残る「跡」の種類と経過、注意すべき異常サインについて詳しく見てきました。では、そうした傷跡をできるだけ残さず、美しく仕上げるためにはどうすればよいのでしょうか。
その鍵を握るのが、術前から術後にかけての適切なケアです。脂肪吸引の成功は、医師の技術だけではなく、患者側の準備や回復期の過ごし方も含めた“二人三脚”によって築かれます。ここでは、脂肪吸引の傷跡を予防・最小化するために必要な医療的対策と日常ケアを、医学的エビデンスに基づいて詳しく解説します。
【術前準備】カニューレや施術部位の設計がカギ
脂肪吸引では、カニューレという器具を皮膚から挿入し、脂肪を除去します。この際の切開部は非常に小さいものの、そこが術後に瘢痕として残る可能性があるため、術前設計が重要です。
- スキンポート使用:皮膚とカニューレの摩擦を防ぎ、創部を保護
- 極細カニューレの採用:直径が小さいほど皮膚への侵襲が少なく、傷跡も目立ちにくい
- 挿入口の位置設計:下着のライン・シワの陰など、目立ちにくい部位を選定
これらは医師の経験と美的配慮に依存するため、事前のカウンセリングで「どのような工夫をしているか」を確認しておくと安心です。
【術後ケア】圧迫・保湿・日焼け対策の具体例
脂肪吸引後の仕上がりを左右するのは、施術そのものだけでなく、術後の過ごし方です。とくに術直後の1〜2週間は組織が最も不安定な時期であり、適切な圧迫・保湿・紫外線対策を徹底することで、傷跡や色素沈着といったトラブルの発生リスクを大幅に下げることができます。以下に、それぞれの具体的なケア内容と注意点を解説します。
圧迫療法
脂肪吸引後の皮膚や脂肪層は一時的にゆるんだ状態にあります。術後の患部を専用のガーメントでしっかりと圧迫することで、内出血や腫れ、皮膚のたるみ、拘縮の予防に繋がり、組織の回復を正しい形に導きます。
術後1〜2週間は「24時間着用」が原則でその後は医師の判断に応じて夜間のみ着用する場合もあります。また、締めつけが強すぎると血行障害を起こす可能性があるため、適度にフィットする感覚が理想。自己判断で緩めたり外したりせず、必ず医師の指導を仰ぐことが大切です。
保湿と創部ケア
創部やその周辺の皮膚は、非常にデリケートで乾燥しやすくなっています。適切な保湿を行うことで、創傷治癒をサポートし、炎症や色素沈着、肥厚性瘢痕の予防にも効果が期待できます。
ワセリン、ヘパリン類似物質(処方薬)、創傷被覆材、シリコンシートなど。市販薬を自己判断で使うのではなく、必ず医師が勧めるアイテムを使用してください。皮膚の水分保持による再生促進、摩擦の軽減、痕の悪化防止。特に乾燥しやすい部位には重点的なケアが必要です。
日焼け対策
脂肪吸引後の皮膚は、炎症後色素沈着を起こしやすい状態にあります。紫外線を浴びることでメラニンが活性化され、色ムラや黒ずみが残る原因となります。
術後から最低6カ月は紫外線対策を徹底しましょう。季節や天候に関係なく、紫外線は皮膚に影響を与えます。SPF50以上、PA+++以上の高機能な日焼け止めの使用に加え、長袖、日傘、帽子などの物理的遮蔽も組み合わせるのが理想です。顔だけでなく、施術部位すべてに配慮しましょう。
【悪化を防ぐ】NG行動とセルフケアの限界
術後の自己判断による処置が、かえって傷跡や色素沈着を悪化させることがあります。
- 創部が完全に塞がる前のマッサージ → 出血や感染の原因
- 市販の美白クリームやピーリング剤の自己使用 → 化学刺激で色素沈着悪化
- 早すぎる湯船入浴・サウナ → 血行過剰により腫れや傷の悪化
美容医療においては、「これくらい大丈夫」という自己判断こそがリスクになります。不安があれば必ず医師へ相談し、医療的に正しいケアを継続してください。
脂肪吸引の跡を改善するための医療ケアとは?症状別に見る主な治療法
脂肪吸引を受けたあと、努力してケアしてきたのに、それでも跡が気になるものです。そんな時、もう打つ手がないと感じてしまう方は少なくありません。ただ、医療にはあとから整える選択肢もあるのです。
ここでは、すでに現れてしまった跡を、どのように、どこまで、どんな方法で整えることができるのかを、症状ごとに具体的に解説します。今まさに悩んでいる方にとって、少しでも希望となるように。美容医療の可能性を、正しく、やさしくお伝えします。
瘢痕にはこれ?ケナコルト注射の効果と注意点
もし、術後しばらく経っても赤みが消えない盛り上がった傷跡が気になるなら、それは「肥厚性瘢痕」や「ケロイド」と呼ばれる状態かもしれません。一般的な傷とは違い、肌の奥で線維成分が過剰に作られ、皮膚が硬く厚くなってしまう反応です。
こうした瘢痕に医療的にアプローチできる方法が、ケナコルト注射。ステロイドの一種である「トリアムシノロンアセトニド」を、瘢痕部分にごく少量・直接注射していきます。
この注射は、肥厚性瘢痕のように「膨らんで硬くなった状態」に特化しており、時間とともに赤みが引き、ふくらみがなだらかに落ち着いていくのが特徴です。
ただし、注射すれば必ず良くなる、という万能な治療ではありません。特に注意したいのは、副作用のリスクです。
- 注射部がくぼんでしまう「陥凹」
- 色素が抜けたように白くなる「脱色素」
- 周囲の皮膚がやせてしまう「萎縮」
これらは、投与量や注射の深さ、タイミングによって変わるため、必ず瘢痕治療の経験豊富な医師に相談しましょう。安全に効果を引き出すには、医師の腕が鍵を握ります。
色素沈着対策!レーザーや外用薬の役割
「傷そのものは落ち着いているのに、黒ずみが消えない」などの悩みの多くは、炎症後色素沈着と呼ばれるものです。脂肪吸引では、どうしても皮膚の内部に軽い炎症が起こるため、そのあとメラニンが過剰に生成されてしまうことがあります。
この状態を改善するためには、まずは外用薬からのアプローチが基本です。
- ハイドロキノン:メラニンの生成を抑える美白成分の代表格
- トレチノイン:皮膚のターンオーバー(再生)を加速させ、色素の排出を促す
- アゼライン酸:敏感肌にも比較的使いやすく、色素沈着にじわじわと効いていく成分
これらは医師の処方で使うことで、3カ月〜半年ほどかけて、ゆっくりと肌の色が均一に整っていくことが期待できます。でも、それでも残ってしまう色素には、レーザー治療という選択肢があります。
- Qスイッチルビーレーザー:深部のメラニンまでしっかり届き、茶色〜黒の色素に特化
- ピコレーザー(ピコトーニング):肌への刺激が少なく、浅い沈着やくすみに優しく対応
レーザーは1回で劇的に変わるものではなく、2〜6回ほどの照射を重ねながら、少しずつ透明感を取り戻していくイメージ。特にピコトーニングは「肌全体のトーンが明るくなった」と感じやすく、リスクの少なさも魅力です。
ただし、赤みが主な悩みの場合は、ピコレーザーよりIPL(光治療)やVビームのほうが適している場合もあります。肌状態に応じた見極めが、とても大切です。
凹凸や赤みに!ポテンツァや再生系治療の可能性
術後、見た目の凹凸や波打つような皮膚の質感に悩む方もいます。これは、脂肪が吸引されたことで皮膚と筋膜の間に癒着や引きつれが起きてしまう「拘縮」が原因であるケースが多いです。
このような肌の質に対しては、従来の薬や表面治療ではなかなか改善が難しくなります。そこで登場するのが、再生医療に基づく治療法です。その中でも、最近注目されているのがポテンツァです。極細の針で皮膚に無数の微細な穴をあけ、そこに高周波(RF)を照射することで、真皮の深層に熱を届け、コラーゲンやエラスチンの再構築を促すというものです。
この治療の魅力は、肌の奥から整える力にあります。単なる表面的な改善ではなく、「肌そのものを、健康でなめらかな状態へと導く」ような治療です。
- 対象となる症状:拘縮、瘢痕、クレーター、凹凸、赤み、質感の乱れ
- 治療回数の目安:1カ月おきに3〜5回ほど
- ダウンタイム:赤みやかさぶたが2〜7日程度出ることがあるが、比較的軽め
また、ポテンツァは単独でも効果が期待できますが、より高い変化を求める場合は、フラクショナルレーザーやPRP(自己血小板)注入との併用も検討されます。
安心できるクリニック選びの基準
美容医療、とくに脂肪吸引のような施術は、誰でもできるわけではありません。経験の浅い医師が施術を行えば、吸引ムラ・凹凸・過剰除去・皮膚のたるみ・神経損傷といったリスクが一気に高まります。だからこそ、その医師が脂肪吸引にどれだけの経験と技術を持っているのかを確認することが、何よりも大切です。
経験の豊富さは、手技の繊細さにも直結します。見た目の仕上がりだけでなく、ダウンタイムや術後の快適さにも、医師の引き出しの多さは大きく影響するのです。
まとめ
脂肪吸引後に生じる跡や傷は、正しいケアと時間の経過により目立たなくなるケースが大半です。しかし、症状が長引いたり悪化したりする場合には、自己判断に頼らず医療機関に相談することが重要です。
瘢痕や色素沈着、拘縮などの跡には、それぞれ異なる治療法があり、早期の介入が回復のカギを握ります。また、施術を受ける前のクリニック選びも、術後の仕上がりに大きな影響を与えます。
専門性・信頼性・誠実性を備えた医師や施設を見極め、継続的なアフターケアを受けられる体制を整えておくことが、安全で満足のいく美容医療につながります。不安なまま放置せず、正確な知識と適切な判断に基づいて、自身の体としっかり向き合いましょう。
アラジン美容クリニックでは、美容医療および美容皮膚における長年の経験や博士号を持つ知見より、出逢う皆様のお一人ひとりに最適な施術を提供する「オンリーワン」を目指すカウンセリングを実施し、余計な情報や提案をせず、「ウソのない」美容医療で、必要な施術のみをご提案しております。
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